足跡

雪の上に続く猫の足跡。マロンのものかプリンのものかはわからない。この季節になると、山形での冬、家のまわりに点々と続く猫の足跡のことを思いだす。

強い風と雪で前がみえなくなることをホワイトアウトというらしいが、そんなときにも、猫たちは外に出たがった。そして、雪まみれになって帰ってきた。

足跡といえば、子供のころ、新雪が降った朝には早く飛び起きて、一番に自分の足跡をつけて歩くのが楽しかった。すると、私に続いて、知的障害者である叔母があとから追いかけてきて、私がきれいな形や文字にした足跡をめちゃくちゃにして歩いた。その荒れた足跡をふりかえってみては、二人して笑い転げたものだ。

あのころから、虫は苦手だった。なのに、カマキリがそばにいる。段ボールの縁にのぼってきては、あたりをキョロキョロ見回している。

魚肉ソーセージを食べたり水を飲んだりして、またゴソゴソ。夫が手を差し出すと乗ってきて、体にもよじ登ってくる。初めは気持が悪かったが、いつのまにか、そのけったいな形相にも慣れてきて、ゴソゴソがなくなると、死んだのかなと、つい気になって箱の中を覗きこんでいる。変われば変わるものだ。

今日も天気がよくて、公園はにぎわっていた。犬を連れている人も多い。公園の猫たちはそんなときは、どこかに潜んでじっとしている。丘の上のチビまる子も木の陰なんかに隠れている。

そういうときには、日暮れが近づいて人影が消えるのを待ち、古墳の上で一緒に遊ぶ。

でも機嫌が悪い時は、声をかけても知らんぷり。そっぽを向いたまま。チビはといえば、そんなまる子と私の様子をつかず離れずじっとみている。

70歳を前にしてふりかえってみると、私の足跡は曲がりくねり、方向が定まらなかった。でも、曲がりくねった先には、面白いこともたくさんあった。まるで、小さいときに叔母と二人して遊んだ雪上の足跡のように。

 

 

 

 

 

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