見捨てられた子

【海の向こうの山を流れ落ちる雲】

※ 写真の内容にショックを受けるかもしれませんので、ご注意ください。

これはかなりひどい話ではないだろうか。そんな事態に出会って、身動きがとれないでいる。
めんどくさいことに首を突っ込んだところで、消耗するだけではないかという考え。
だけど、このまま見過ごせるのかという自問。
対立する二つの想いのあいだで、ずっと揺れていた。

【元気だったころには、よくここで昼寝をしていた。】

けれども、重い病気で片耳がもうなくなりかけている猫を、病院に連れて行って、そのあとの面倒をみてもいいという保護ボランティアに出会って感激し、それならばと心を決めた。

このブログでは「姫」という呼び名にしていた通称「シロ」というメスの猫のことだ。
左の耳が欠け始めたのはいつからだったろうか。

初めは、単純なケガか化膿で耳が欠けてしまっているのだろうと思って、それほど気にはしていなかった。
それに、シロのことを一番に知っているのは餌やりさんだし、なにか考えがあるのだろうとも思っていた。
ところが、シロの左耳はどんどん小さくなっていった。
これは単なる化膿とか怪我ではないと確信し、写真を撮って医者に相談した。

【このころにはまだ耳は欠けている程度だったが・・・。】

医者は、見てみないとわからないがと言いつつも、皮膚がんの可能性を示唆した。
白い猫は紫外線にとても弱いのだそうだ。
それでも、公園に居ついた猫だし、捕まえるのは容易ではないので、という事情を説明すると、抗生物質を用意してくれた。

さっそく、その薬を餌やりさんに渡し、餌に混ぜてほしいとお願いすると承諾してくれたのだが、やっている様子がない。
不審に思い、餌やりの様子を見ていると、彼女は離れたところに餌を置いて、シロが食べている間はスマホをいじってばかり。食べ終わるとそそくさと帰る。薬をやっている様子もなく、シロに近づいて様子をみることもない。
そのあいだにも、シロの耳はどんどん小さくなっていく。

【今では急激に進んで、根元のほうにまで侵食している。】

そんなとき、ある人から、「捕まえて病院に連れて行ってくれる人がいたらお金はだすから、誰かいないかな」と言われ、そのことを餌やりさんに伝えた。
すると彼女はしばらくして、「猫をここから連れ出すことはできないし、しないで」と言った。まるでここは自分たちの縄張りだから、よけいなことはするなと言わんばかり。

【右の耳にも転移している様子】

それは彼女の意見なのだろうか。それとも、彼女の餌やりにいちいち指示しているリーダー格の人の意見なのだろうか。
だとしたら、そのリーダー格の人と交渉すればいいと考えたのだが、彼女は一筋縄ではいかないという評判。
あちこちで、トラブルを引き起こしているような人。
とても太刀打ちできそうになかった。

リーダー格の人は、公園を管理している役所ともひどく揉めて、弁護士まで中に入っているというほどの強者だ。
そうこうしているうちに、シロの耳は溶けるように、どんどん小さくなっていく。
そのうちに、顔も溶けていくそうだ.。
美しかったシロのそんなところはなんとしても見たくはない。なんとかしなくてはと、気持ばかりが焦る。

捕獲するにも、その地域猫のリーダー格や餌やりさんには理解してもらえそうになく、こっそりとしなくてはならない。
もう自分の力だけでは無理だと諦めかけたが、何か方法がないかと探していると、引き取って病院に連れて行き、あとの面倒をみてもいいという保護ボランティアに行き当たった。
ありがたい、ということで、今日、捕獲にチャレンジしたが、失敗に終わってしまった。

【以前は美しい佇まいだった。】

病気のシロの気持をかえって傷つけることになり、いっそうの警戒心を抱かせることとなってしまい、自分にも腹が立ってしかたがない。
けれど、このままにしてはおけない。
シロには申し訳ないが、もう一度だけチャレンジしてみようと思っている。
「どうせ野良なんだし、ガンだったら治らないんだし」という声も多い。
実際にシロを見なければ、自分もそう思うかもしれない。心配なのは、こんな環境で傷口に虫が湧かないかということだ。


それにしても、公園の猫たちを自分のもののように扱い、血をにじませて耳が溶けていく猫を病院にも連れて行かず、渡された薬も飲ませず、見て見ぬふり。みかねて、病院に連れて行こうとするものまで阻むなんて、どういうことだろうか。
この前のブログでは、人間ていいなあと呑気なことを言っていた自分が、今はずいぶんと愚かにみえてくる。

人間のよさと怖さの両端を思い知らされている。 

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