ハグをする。

鶴の求愛ダンス     photo by PIXTA

外国人、とくに欧米系の人たちは、よくハグをする。
テレビを見ていると、初対面の人でも臆するところがない。

昔猫のプリントとマロン   二匹でよく、くっついていたな。

でも、日本人にはなかなか難しい。
なので、日本の首脳級の人たちが外国に行って挨拶のハグをしている様子を見ると、なにかぎごちない。
習慣になっていないからだろう。

ずっとそう思っていたけれど、母にしばらくぶりに会った時、なんだか抱きしめたくなって思い切ってハグをしてみたら、母はちょっと恥ずかし気だったが、嫌がらなかった。
考えてみれば、私が母を抱きしめるなんて初めてで、予想以上に体がかぼそいことに驚いた。

やぎのカップル?

そのころの母は、デイサービスで施設に通っていたので、訪ねるときにはまずその施設に行き、それからどこか外での食事に誘い、ゆっくりと話をしてから実家へ帰ることにしていた。

実家は兄が継いでいたので、兄嫁に気を遣わせないように、母も気兼ねなくなんでも喋べれるようにとそうしていた。
そんなときの母は、よく喋べり、よく笑い、わがままになった。
そんなときは、楽しい時間がずっと続いていくように思えた。

うさぎさん、今年は頑張ってね。

そそうしたことを何度かくりかえしているうちに時がたち、母は病院に入った。
藤枝と八戸では、かなり距離があってあまり行けなかったが、病院に行くたびに、私はできるだけベッドの上の母を抱くようにしていた。
体がどんどんか細くなっていくのがわかった。

ハグなんて照れくさいと思っていて、もちろん、日本ではそんな習慣もないし、他人にそんなことをするわけもなく、せいぜいそばの猫をハグするくらいなのだが、動物は、ごく自然にハグをするようだ。

春が待ち遠しいね。

鶴のカップルは同じ相手と何年もツガイになるようだ。
けれど求愛シーズンになると、オスは初めての相手のように、必ず求愛ダンスを優雅に舞うという。
長い首をからませ、まるでハグをするようにして。

なんて、素敵なことだろう。
凛とした儀式のようで、しかもそこには愛が籠っているようで。

うーん、母親にはハグができたけれど、父親にはできなかったな。
二人とも、もうこの世にはいないが、父親のときにはそんなことも考えない冷たい娘だった。
でも、もしも父にハグをしたなら、どんな顔をしただろうか。
きっとびっくりして、呆れた顔をしたかもしれない。

でも今でも、思いだすのは、母親とハグしたときのあの感触。
やっぱりね、体温とか体の感触とか、いろんなことが伝わってくるから、触れるということは大切なことだ。

遊び盛りのミーナにはハグする相手も遊び仲間もいないので、せめて空中散歩でも、とこしらえてみた。
結構気に入っているようで、よく上っている。
それに、ミーナときたら、なかなかハグをさせてくれないんだよな。

文中の縫いぐるみの絵は、大旅籠柏屋の職員さんたちが作ったものです。ありがとうございます。

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