だいじょうぶだよ。

そんな言葉をしらずしらず呟いている毎日。
大変なときに、つい、口にする言葉だ。

山形から大阪に引っ越すとき、猫二匹を連れての900キロの大移動のときも、高速道路を走り続ける車の中で、何度も自分にそう言い聞かせていた。
そしてまた、大阪からこの藤枝に引っ越してきたときにも、鳴きわめく猫と一緒に自分も泣きだしたくなって、思わずそう繰り返していた。

【桔梗】

でも、ただ、だいじょうぶ、って繰り返していてもなにも始まらないから、一日30分、なにかに没頭することにしている。
庭の伸びた草を黙々と引き抜く作業とか、汚れたスニーカーを丁寧に洗ってみるとか、ただひたすらに床を拭く掃除をするとか・・・。

【青いバラ】

ここしばらくシロのことでほったらかしになっていたものたちに、手をかけてやる。
すると、なにか、少しずつ、気持が落ち着いてくるのが不思議だ。
お寺のお坊さんが朝、長い廊下の拭き掃除をしているのをテレビなどでみかけるけれど、あれはたぶん、廊下をきれいにするためだけでなく、きっと心を磨いているんだろうなあ、と思う。

昨日と今日は朝から庭の草引き。
夜には、スマホの整理。
不要なアプリや、使わなくなった連絡先の削除など。

【庭に出ると、こういうことにも出会う。】

とても親しくしていた友人の電話番号を、亡くなってからもずっと削除できないでいた。
それを、ようやく削除することができた。
それから、いつからか連絡がとだえてしまった古い友人たちの連絡先も。

いつか会うだろう、いつか会いたいと思ううちに、その存在が少しずつかすんでいく。
たぶん、みんな、元気でいることだろう。
連絡先を消去しても、彼女、彼らの笑顔は忘れられない記憶となって、心に残り続ける。

ちょっとさびしい気持にもなるけれど、だいじょうぶだよってつぶやいてみる。
そのぶん、新しい繋がりができて、楽しい会話ができているから。

母親が持たせてくれた着物たちにも、さようならをした。
亡くなって、もう7回忌も終えたから、きっと許してくれるだろうと思いつつ。
「やっぱりおまえは、しょうもない子だなあ」と苦笑いをしている気がする。

マイペースな性格なものだから、「あなたって一人が好きなのね」とよく言われたものだが、とんでもない。
大家族のなかで育ったせいか、人一倍の寂しがりや。

だから、猫がそばにいてくれるのはうれしい。
でも、ミーナの方は、一匹だけだとつまらない様子。

窓の外を日がな一日ながめていて、ほかの猫が通るのを心待ちにしている。
とくに、スズ君が見えるととても興奮する。
見ていて、かわいくて、そして、外に出してやらないことがかわいそうにもなる。

シロのことも、孤高な猫だとばかり思っていたのは、少しちがっていたようで、餌をやる人もたくさんいるし、病気のことを気にかけてくれる人も少なからずいることを知って、ほっとしている。

【警戒しているのか、居場所をよく変えるシロ】

けれど、シロの私への警戒は解けず、今日も、名前を呼ぶと甘えた声をあげて近寄ってきたが、はっとして立ち止まり、すぐに離れて餌だけを食べた。
先日は、ほかの餌やりさんも保護にチャレンジしたが、シロは察しがよく、近寄ってこなかったという。

ただ、じっと見守ることしかできない日々。
それでも、だいじょうぶだよ、とシロと自分に言いつづけている。


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