鏡の中の誰かさん

ふうわりと、夏の夜空を照らす満月。
そんな月を見たいなあという期待は外れて、雨。

月を見るかわりに雨の音を聞きながら、ひさしぶりに鏡をゆっくりと見た。
考えてみるに、このひと月、お月さんも鏡もろくに見ていなかった気がする。

【2021年7月22日 古墳の丘からみた月】

シロは、まったく近づいてくれないかと思うと、隠れている茂みからニャッと声を出したりもする。
望みをつなぎ、保護ボランティアさんを中心にして捕獲にかかるが、シロのほうが利口なのか、いつも悟られて頓挫する。

生きるために必死なノラは、人よりも賢くなくては生きられない。
人間が、ご機嫌をとったり必死になったりしたところで、その心を掴むことはできない。

【屈託がなかったころのシロ】

シロちゃん、と呼べばニャッと返事をしてくれる。嫌っているようには見えない。なのに、近づけない。
まるで、追えば逃げる恋人みたいなんだよね。

市役所にかけあい、ようやく置いた捕獲器も役には立たなかった。
餌をやる人の存在が何人もいることが明らかになってきて、これではわざわざ捕獲器に入らなくても餌は充分に足りているわけで、撤収することに。

【縄張り争いをしていたシロも、今ではもう逃げるばかりだ。】

シロの病状は進み、じりじりと時ばかりがたっていくなか、家の中や食事は雑になり、庭の雑草も伸び放題。
これではいけない、ひとまず落ち着いてみようと立ち止まる。

そして、ひさしぶりにゆっくりと鏡を見てびっくり。
「ううん、苦労を刻んだ顔になっちゃったなあ」
「そりゃそうだ。このひと月ときたら、もう、なにもかもそっちのけでシロのことばかりだったんだから」
と自問自答。

それで伸びっぱなしの髪を切りに美容院に行き、帰りには、ちょいと高めの化粧品を買ってみた。
なんでも、皺やたるみに効くそうで、期待して家に帰ってパッケージをみると、塗ってから、しばらく口許から額まで引き上げてそのまましばらくキープしているんだそうな。すると艶顔になり、皺もたるみも目立たなくなると書いてある。

めんどくさい。読んだだけでもういやんなる。でも、高かったしなあ。
思い直し、取説どおり、クリームを顔に塗り、顔の表皮を持ち上げてみるけれど、しだいに顔が突っ張ってくるし、持ち上げている手もくたびれてくる。

【また、なんかやらかすミーナ】

すると、そばでミーナがなにやらモソモソと動き始め、私を笑わせる。
やめてよ、ミーナ。笑わせないでよ。このまましばらく静止してなくちゃいけないんだから。

そして、ひさしぶりに公園に行くのはやめて、車をいつもとは違う方角へと走らせる。
掛川の「道の駅」だ。友達の話によると、なにしろ野菜の直売がいいらしい。
やっぱり、化粧品よりも食べるほうが先なのだ!

朝に収穫したトウモロコシやスイカ、トマトなど、買い物を終えて帰ろうとすると、おっと、宝くじ売場の横に、こんな像が鎮座している。で、思わず立ち止まった。
なんだか縁起がよさそうで、当たりそう。でも、買わなかった。だって、確率低すぎるんだもの。

行き詰ったときには、リセットしてみる。
新鮮なものを欲しがっていた体に、トウモロコシやスイカの味はじわじわと染み入ったのでした。

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