ボーダーライン

幸せと不幸せ、幸運と不運、若いとか老けたとか、すべてにボーダーラインがあるように見える。
でも、そのラインを決めるのは自分だからなかなか難しい。

ポジティブ思考をすればいいとか、自分を肯定すればいいとか、お金持ちになるにはこうすればいいとか、そんな、人生を好転させる考え方はネットに溢れている。

けれど、生き方のhow toを読んだところで、体に染み入ってくるものはごくわずか。
無理にポジティブになろうとしても続かないし、だいいち身につかない。

むしろ、考え方や生き方を変えなければと思うプレッシャーのほうが強くなって、かえってストレスになるから、無理をするのはやめて、これはもう自分の性分なのだから、せめてこれからは可愛がろうと思うことにしてから久しい。

だらしなく過ごしたときも、きちんと掃除したときも、怒りや悔しさに流されて絶望的になるときも、みんなかわいいと思えば気にならなくなる。
誰がほめてくれるわけでもなし、自分で自分をほめたって、別に誰かに迷惑をかけるわけじゃなし、ただでいい気分になれるのがいい。

そんなことを思っていたあるとき、以前に出会ったすてきな人と道で出会い、その人の家へお邪魔し、お茶を頂いた。
とても簡素な家の中だった。

その古い家には物がほとんどなく、シンプルな部屋に、テーブルと椅子があるだけだった。
そこで、彼女と私は、まるで古くからの友人でもあるかのように深い話をした。

彼女からは以前、夫が他に好きな人ができて家を出ていき、今は残された家に一人住まいだと聞いていた。
たがいに年齢も近く、ヘアカラーもせず、簡素な暮らしは共通で、話が弾んだ。
そして私は、帰りぎわに、つい失礼なことを言ってしまった。

「ご主人のその後のことはご存じなのですか?」
すると彼女は、「全然。生きているのかどうかも知らないし、知りたいとも思わないから」と、きっぱり。

彼女の家の前を通ると、庭に、よく車が止まっている。
そんなときは、古くからの友人たちがよく立ち寄ってくれて、お喋りをしていくのだと話していた彼女の顔が浮かぶ。
「夫がいないから、かえってみんな寄ってくれるのよね、気を遣わないから」

ご主人との話を聞いた時には、ちらりと、彼女の深い谷を覗いた気がしたけれど、庭に止まっている車をみるたびに彼女の笑顔が浮かんできて、幸せとか不幸せとかを考えることの馬鹿さ加減を思い知らされるのです。

家へ帰ると、ミーナがキッチンで探検中。
いと、おかし。

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