ドラゴンとルピナス

【龍の形の雲】

あったかい日のあとにきた冷たい強風。
そんな中、視線を上げると、空には龍の形の雲が。

池の淵をとぼとぼ歩きしていた私に、喝!
うまくいかない日々が続き、心も体もくたくたになっていた夕方だった。

しばらくみつめているうちに龍の形はしだいに崩れ、また歩き始めたとき、今度は、色鮮やかな花が眼に入った。
春の色が夕暮れに明るく並んで、天を向いている。

こちらも、私に喝!
そこのあなた、上を向いて!

【ルピナス】

先日、ふっと聞いた自分の噂が、なかなか消えないでいた。
ふだんはあまり人の噂など気にしないほうだが、心が弱っているときには刺さる。

「あなた、いろいろ市役所に注文ばかりつけるから、市役所では有名みたいよ」
その人の話だと、どうやら私はクレーマーになっているらしい。

確かに私は古墳の丘の二匹の猫たちに餌をやり始めてから、市役所に連絡をすることがよくあった。
危険なことや納得できないことは確認し、お願いもした。

【古墳の丘のチビとまる子】

そして今は、池のまわりの猫たちのためにいろいろ話しをする。
アズキの居場所のあたりが荒らされることもあるし、奥まったところで暗くなると物騒なので、防犯カメラの設置をお願いした。

けれど、一向に取り付けてくれる様子がない。
危険な階段になんの改善もみられない。

その現実に、相変わらず、しょうもないことばかりしてるんやな、とささやく自分の声が聞こえてくる。

外の猫に関わるとお金も時間もかかるし、嫌なことも少なくない。
それでも活動を続ける原動力はなんだろう。

それはたぶん、猫たちの健気さだ。
生きることに意味など探さず、どんな環境であっても生きていこうとするところ。

アズキは、怖いことがあると、いつも山のほうに隠れているから、姿が見えないときにはそっちに行って名前を呼ぶことにする。
すると、しわがれた声で返事をしながら、のそのそと降りてくる。

【お気に入りの毛布はみんな放り投げられてしまった。】

あったかい毛布などを敷いているいつもの場所に誘導すると、ちゃんと戻る。
言葉が通じているとしか思えない。

いたずらが頻発し、早く保護をしてやりたいのだが、受け入れ先に空きができず、もう少し時間がかかりそうだ。

【イケメン夏男】

通ると時折出てくる春子と夏男きょうだいも、なかなかの存在感。

少し前に、先輩猫の茶々が保護されて、そのエリアは春子と夏男きょうだいだけになり、ちょっとさびしそうだ。
しばらく春子姉ちゃんの姿が見えなかったのでみんなで心配していたら、ちゃんと戻ってきて、昨日は、二匹並んでご飯を食べていた。

【左が夏男、右が春子。夏男の方が一回り大きい】

この二匹は本当に顔も体の模様もそっくりで、しっぽを見ないとよくわからない。
きょうだいが二匹揃っていると、いつも心がほんのりと温かくなる。

日差しは春だが、風は冬のようにきつい季節。
空の龍に喝を入れられての帰る途中、例の猫様が鎮座しておりまして、パシャリ。

それでも動じない風格の猫様は、さすがです。
ゆったりと過ごすことができる場所がある、家猫のゆとりですね。

というわけで、いつのまにやら、いやな噂は北風に流されていきました。

安全とか防犯とか、あまり目立たないことは無視して、目立つようなことばかりに税金を使う、役立たずな役所のことなんかで、心を浪費をするのは、もうやめましょう。

て空の龍のように、すいすいと風に乗って、鬱陶しいことなどかわしてしまいましょう。

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