魅惑の佇まい

【柚木沙弥朗氏が染色したものだという】

このごろ、それまで知らなかった人との出会いが楽しい。
わくわくして、その人の魅力に触れ、刺激され、心に活力が生まれる。

若い人にしかない魅力は見てのとおりである。
けれど、年を重ねた人のそれは、話してなんぼの世界。
話すほどに深みがましてくるものだ。

【雪ん子】

まるで、玄関から奥の部屋へと案内されるようにして、その人の人生にお邪魔する。
そうして、その人の笑顔や言葉や雰囲気に触れ、刺激され、満ち足りた気持で失礼する。

先日、友人の知人が自宅で開いたギャラリーにお邪魔した。
絵絣やあちこちで集めたという民芸品などが、味わいよく飾られていた。

誘ってくれた友人と一緒に、さまざま飾られている珍しい品々を見て回り、そこのお宅のご夫婦から、集めた物たちにまつわる話や手に入れたいきさつなどを聞いた。

見終わってからは、お茶とお菓子を頂きながら、これまでの人生の話を伺ったり、ひきこまれるようにこちらもさまざまなことを喋ったりしたのだが、いとまをしてからも、その人の笑顔や言葉は私の中のどこかでひっそりと寄り添い、なにかのときに、さりげなく浮かんでくる。

【2024年11月18日~24日 ギャラリー駿河台】

夫人の装いも個性的だった。
洋装の上に普段着使いの和服を重ね、帯は、パチンと止めればすむように加工してあって、動きやすそうだった。

和服もこんなふうに使えれば楽しいだろうなと、びっくり。
素敵な人は工夫も抜群だ。

自分もこんなふうに好きなものたちに囲まれた静かな日々を送れたらどんなにいいだろうか。
それほどに、その人のお宅には、私が好きなものであふれていた。

【唐獅子模様】

古いものは時空を超えて、その物が使われていたころの空気を運んできてくれる。
ふっとタイムトリップして、その時代に生きていた人々の暮らしを感じさせてくれる。
糸から染めて、木綿の布を織っていただろう姿や機織りのリズミカルな音までも。

展示会を開いたその人は、一つ所に長く住み続け、魅力あるものに囲まれて暮らしている。
逆に、私は何度も引っ越して、好きなものたちを手放し、今ではほんのわずかしか身のまわりにはない。
それでも、こうしてときおり、好きなものに触れる機会があれば、それでもう十分だという気もする。

【オリエンタル風の皿】

その人のお宅の佇まいに刺激され、今日は天気がよかったから、夫と二人で、家じゅうの窓や網戸の掃除をした。
築年数が古い家はあちこちガタがきていて、まるで住んでいる私たちのようだ。
それでも、少し手入れをしてやったり磨いてやったりすれば、なんとなく気持もすっきりとして、ストレスも減る。

【新しいマットを置いたら、さっそくミーナが乗る】

あれもこれも古いし、家も人間も古い。
けれど、暮らしを重ねた味というものを楽しめるようになれれば、もうそれはなによりの生きる知恵になるんじゃないのでしょうか。

一口に素敵に年を重ねるというけれど、それはたやすいことではない。
そうなるためには、高い美容液よりも、心に沁みてくる言葉や素敵な人に会うこと、時には苦難を乗り越えることだと思うのです。

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