春は、まず光から。
そう、窓から差し込む光はどんどん強くなっている。
公園の池に反射する光も、しだいに強烈になってきた。
ラジコンのボートを浮かべて遊ぶ人がいて、眺めている人たちが声をあげ、幼い子たちの列が通りすぎていく。
どこもみな、明るい空気。
そんな朝、萩サビちゃんとの最後の別れ。
日向っ猫さんが、最後にサビちゃんがよくいたお稲荷さんのところまできてくれて、急の連絡に数人の人が駆け付けた。
サビは、まるで、安心しきって眠っているような顔。
撫でて、その冷たさを感じなければ、ただ眠っているような、苦しみのない顔。
最後に、ようやくほっとしたんだね。
顎にひどい傷を負っていたことに誰も気づいてやれず、食べられなくてお腹はすくから、痛みをこらえてなんとか食べようとしていたことを知ったのは、あとになってから。
成猫だというのに、体重が1.9キロしかなかったなんて。
サビちゃんについては、餌をやっていた人たちみんなに悔いが残っていた。
それでも、住み慣れた場所でお別れができたことを、サビもきっと喜んでくれたのだろう。
日向っ猫さんには、サビの声がかすかに二度聞こえたという。
「これからは、猫たちになにか異変を感じたら、すぐに連絡してください」
日向っ猫さんの力強い言葉は、どれほど希望になったことか。
といっても、個人の力には限りがある。
みんなもそれぞれ事情を抱えていて、病院に連れて行ったり保護をするのも難しい状況だが、それぞれができる力を合わせれば、と思う。
もうこんなことは二度と繰り返さないようにしよう。
気持に区切りがつき、今度のことは戒めともなり、春浅い朝、日の光がふりそそぐ下、そんな思いで見送った。
春の雨は、しばらくは涙の色だな。
池の淵に、去年はこなかった青い鳥さん、今年はきっと、幸薄い猫たちの許へきてやってよね。