今度、映画になるという、「仕掛け人・藤枝梅安」。
なぜ、藤枝かというと、藤枝宿が出生地になっているから。
だいぶ前のテレビドラマでは梅安を緒方拳が演じ、とてもセクシーで、はまり役だった。
「人はいいことをしながら悪いことをし、悪いことをしながらいいことをする。」
原作者、池波正太郎の思いを、緒方拳は怖ろしいほど巧みに表現していた。
さて、今回、映画の豊川悦司は、どんな梅安を見せてくれるのだろう。
池波正太郎の小説は、数々のドラマや映画になっている。
私は、藤枝に住んでしばらくたつのに、藤枝と梅安の繋がりを知らなかった。
それが偶然に神明宮という神社にお参りに行き、横を見るとなにやら古ぼけた立札が。
なんと、「藤枝梅安出生地」の立て札があったのだ。
えっ、嘘でしょ。だって、梅安は架空の人物だし。
そう思って調べてみると、池波正太郎の原作、「おんなごろし」の中に、生まれた場所が書いてある。
「おれはね・・・・・駿河・藤枝の生まれでね。親父は宿の神明宮の前で桶屋をしていたのだ・・・」
「親父が死んだとき、・・・おふくろは藤枝から逃げてしまったのさ、おれをひとりぼっちに置き去りにしてな。・・・」
置き去りにされた梅安は、その後、江戸から京へ帰る途中の、鍼医である津山悦道が藤枝宿に泊まった際に拾われる。
やがて自分も鍼医となるのだが、育ててくれた師が亡くなって江戸にのぼり、表向きは腕が立って気のいい鍼医、裏では仕掛人として生きていくようになる。
梅安は、フィクションの中の人物。なのに、こうして、小説の中に出てくる場所を歩くと、私のなかの緒方拳の梅安が、すっとそこに立っているような気がしてくる。
近隣の宿で有名なのは、藤枝宿の隣り、岡部宿の大旅籠柏屋。
その入り口には等身大の人形、泊まり客と迎えるおかみさんが座って、なにやら談笑している。
わらじを脱いだ足を洗いながら話す客とのやりとりが、賑やかに聞こえてくるようだ。
池波正太郎の世界をかいまみて梅安の生い立ちを知り、さらに藤枝が好きになった。
藤枝というところは、ちょっと奥に入ると、深い自然に行き当たる。
ところどころに、旧東海道の杉並木も残っており、時代も感じられる。
たまに、こんな光景にも行き当たるんです。