深刻だけど、笑い話になりそうな病院の話

この暑さで熱中症になり、救急車で運ばれる人が多いと聞く。
私は熱中症になったことはないけれど、救急車に乗ったことは三度ある。

救急隊員はいつも親切だったが、搬入された病院の対応に驚いた経験がある。
それは、ある年の正月のことだった。

【うまく隠れたつもり】

めまいがひどく、眼をあけただけでもう世界がぐるぐる状態になり、吐き気もひどく、とても我慢ができなくなって救急車を頼んだときのことだ。

正月とあって、開いている病院は数少ない。
病院はひどく混んでいて、看護師たちも忙しそうだった。

そのせいか、なかなか医師が回ってこない。
吐き気はひどくなるばかりで、持ってきたタオルももうびしょ濡れだった。

それで、寝返りも打つのも大変な状況のなか、看護師さんをどうにか呼び止めて事情を話した。
なにか容器をくれないかと。

【夏バテかな?】

すると、若い男性看護師は、ふっと視界から消え、そうして、なにやら枕元に、ホラ、と投げてよこした。
みると、大人用の紙おむつ。

しかたなく、私はそれを使っていたのだが、やがて、彼はまた近づいてきて、「脳のCTを撮るから移動する」と言った。
めまいがしてならないのに、彼は、ものすごいスピードでストレッチャーを走らせ、私の吐き気と眩暈はピークに達した。

誰か助けて、と言いたいのに、あまりの具合の悪さに声も出なかった。
付き添っているのは、もう一人、女性看護師だったが、なんと、男性看護師はストレッチャー押しながら、その女性看護師をナンパし始めた。

女性看護師は黙ったまま後をついてきているようで、顔は見えなかった。
なかなか女性看護師が誘いに乗ってこないのか、男性看護師は「くそたわけ」と、小声でつぶやいた。
そんな状況で、長かった廊下の移動が終わり、ようやくCTを撮る部屋についたのだった。

【ミーナの最近のお気に入り】

それから数か月後、同じ病院で、また時間外で診察をお願いした時も、ちょっとひどかった。
猫に餌をやろうとして草むらに入ったとき、マダニに食いつかれたらしく、気づいたのは夜の9時。

マダニはしっかり私の脛にかぶりついて、大きくなっていたのだ。
感染症の菌を持っていたら命に関わるという知識があったので、すぐに病院に行った。

夜のせいか、若い医師が多かった。
研修のためか、私の脚についているマダニを見るためなのか、数人の医師がまわりを取り囲んだ。

そうして、ワイワイガヤガヤし始めた。
「これがマダニちゃんね。結構な迫力! ガッツリ食いついてるな」
「生きてるよね。ほら血い吸ってるやん」
「ねえ、これは縦に切るのがいいか、横に切るべきか」
「そりゃ、縦でしょ」
「いや、横だよ。傷が目立たない」

【公園のサビ猫 モミジ】

私にしてみたら、縦だろうが横だろうが、早くしてくれ! なのだが。
彼らは議論ばかりして、なかなか処置をしてくれなかった。

とそんなわけで、そばでああだこうだと見世物みたいにされてメスを入れられ、無事にマダニは取れた。
血液検査の結果、感染症の問題にはならず、ほっとして帰ってきた。

まあ、その病院には、またお世話になるかもしれないけれど、その時にはどうか、笑い話になりそうな対応はやめてほしいな。

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