ワールドカップ日本男子バレーチーム
ワールドカップの男子バレーボールを見ていて、驚いた。
日本チームの選手たちの表情の豊かさだ。
プレーが決まると、吠える。
まるで、獣が獲物をしとめたときのように、思いっきり吠える。
「えっ、これが日本チーム?」
と、思うほど、大きく口をあけ、心底吠える。
外国の選手ではよくみかけるが、試合中にこれほど感情をあらわにする日本チームを見たのは、私の記憶ではほとんどなかった。
なので、惹き込まれるようにして試合を見ていた。
それがまた一人だけではなく、どの選手も全身で喜びをあらわす。
とてもストレートで、文句なしにカッコいいのだ。
昔から、慎み深いのが美徳とされていた日本。
だから、オリンピックなどでも、他国の選手にくらべて、喜びをあらわすのも遠慮がちにみえた。
なにしろ、ちょっと前までは、高校野球の試合中に塁に出た選手がガッツポーズをすることさえ禁止にしていたこの国のことだから、遠慮がちになるのも無理はない。
人前で感情をあらわにするのは礼儀に反するという道徳もある。
それが美徳と映るか、遠慮していると映るかは、みている側の問題だろうが、みている側からすれば、すなおに喜びをあらわしてくれるほうがよほど面白い。
スポーツ精神というのはよくわからないが、抑制が効きすぎるとだいたいが面白くない。
しかもそれが、古いおとなたちの観念の化け物だとするなら、なおさらのこと。
全身で戦い、全身で相手をけちらし、全身で喜びをあらわす。
そんな素朴な彼らに、ひさしぶりにテレビに釘付けになった。
うまくいかないときには、また全身で悔しがる。
顔面めがけてくる強烈なサーブを転がって受け止める。ひたすら、ボールの行方を追いかける。
「吠える、喜ぶ、くやしがる」は、戦う人間の三原則のような気もしてくる。
鍛えた肉体が跳躍し、なんの道具も使わずに、腕をしならせてボールを打ち込む姿には感動を覚える。
しかも彼らは、ビジュアル的にみても、美しい。
体を鍛えるだけではなく、外見も充分に磨いている様子。
触れると、跳ね返ってくるような肉体とあか抜けた外見。
試合を見るたびに、ハートがビートを打っている。
肉体は精神とともにあるということに、あらためて気づいたのです。