住む場所が変わると、ここが自分の場所だと思えるまでしばらく時間がかかる。
引っ越しを繰り返してきた自分は、それでも、新しい土地に新鮮味を感じて、しばらくはいつもわくわくしていた。
賃貸であっても、仮住まいであっても、できる範囲で自分流にアレンジすると、なんとなく落ち着いて、自分の場所だと思えてくる。
模様や色が気に入っている大きな布を壁に垂らしてみたり、邪魔な扉は外してちょっとした空間づくりをしてみたり、押入れにはバーをつけてクローゼット風にしたり・・・。
出る時には元に戻さなくてはならないけれど、そうやって手をかけた空間は使っているうちに改良を重ねるから、すっかりなじんでいる。
もちろん、家をつくるときにあれこれと注文をして造ってもらったものには到底くらべものにはならないが、それなりに暮らしやすくする工夫ができてくると、案外と楽しいものだ。
特に、退屈なときなどは、そんな作業がうってつけ。
物を整理して不要なものを処分し、すっきりした部屋になると、もやもやしていた気分までリフレッシュ。
人にもよるだろうが、自分はいつもそうやって、自分をなだめてきたような気がする。
多少不細工でも、できあがった部屋をみながら、ゆっくりとハープティーなど飲むとリラックスできる。
そばに猫などいて、の~んびりしててくれるとなおいいんだなあ。
けれども猫は、場所が変わるのが超苦手な生きものらしい。
実際、私も猫を連れての引っ越しを二回もした。
猫のためにギリギリまで引っ越しをためらった末のことで、たしかに、初めはかわいそうだったが、そのうちに馴れてくれた。
案外、猫は順応性も持ち合わせているようで、時間はかかるがなじんでいくようだ。
それを怖れていたら、つぎのステップには上れない。
一緒に生まれた相棒が妙な死に方をしたので、ミーナを保護したのが、ちょうど3年前の3月2日。
保護し、里親さんを探してトライアルまで行ったものの、すぐに戻されてしまった。
人馴れしていなくてもいいよと言われてお願いしたのだが、やはり無理だった。
かわいい顔に似合わず、ミーナはとんでもなくヤンチャで、まるで忍者みたいに高い所に飛び移る。
ようやく指で触れられるようになったのが半年たってから。
正式の譲渡会に出せる条件が、抱っこできるということで、それすら、とうていできなかったのだから。
3年たって、ミーナは少しのあいだなら、どうにか抱っこができるようになり、病院にも行けるようになった。
どうやら、ここが「あたしの場所」だと思ってくれるようになったようで。
保護され、癌のために耳を切り取る手術をしてから半年たったシロちゃんも、ようやく、ケージを出て、日向っ猫さんちの家の中の探検を始めたそうだ。
それでもまだ、最後はケージに帰るそうで、シロにとっては、まだまだケージの中が、「あたしの場所」なんだね。