危険の隣り

今、公園は、散りそびれている桜と妖しくて甘い匂いを放っている藤の花と、つぎからつぎへと先揃うツツジと、上にも下にも花がいっぱい。
人々は浮かれながらあちこちで立ち止まり、スマホをかざす。

桜が終わって藤の花が咲き、藤まつりというイベントが始まる季節は、公園が一番ざわざわする季節。
駐車場には車がいっぱいで、なかなか入れない。
池のまわりの道は人々でごった返し、子供の泣き声、犬の吠える声、若者たちの奇声、なにか気違いじみた興奮に包まれる。

そんなわけで公園は、静かな時間を過ごしたいと願う人々には、近寄りたくない場所となった。
できれば、私もそういう時期には近づきたくないのだが、猫たちが待っている。

【公園の奥まった場所。祭りのときには、ここにも人が集まり、騒ぐ】

公園に人を呼びたいというのが市長の方針だそうで、数年がかりの工事を終え、観光地化された。

その効果が出ていることで、市長はニンマリしているんだろうな。
あちこちの空き地が、誰もいない公園になっていく。
税金を公園にばかり使わないで、もっと違うことにも使ってほしいな。

そんなことを考えながら、池のまわりを歩いて行くとパトカーが二台止まっていた。

なにかあったようで、走ってくる警官の一人とすれ違った。
なんだろうと思いながら、アズキやふじ子がいるあたりに急いだ。

すると、いつも二匹がいる場所の奥まった場所に、5、6人の警官がいて、一人を取り囲んでいた。
その様子を見ながら、アズキとふじ子に餌をやっていると、どうも、取り囲まれている初老の男性がなにか迷惑行為をしたようだ。

警官に囲まれている彼は、夕方になると奇声をあげながら、池のまわりで釣竿を垂らしているのだが、魚が釣れたのをみたことがなく、ただ、誰にともなく怒鳴り声をあげては場所を変えては歩き回っているのだった。

当然、誰もが距離を取って歩くのだが、ほぼ毎日のことなので、慣れっこにもなっている。
その彼がついに、なにかしでかしたのだろう。

しばらくして、警官たちとその男は移動していった。
そして、彼らの後ろ姿をみているうち、ふっと不安になった。
ここで暮らす猫たちは、いつも危険と隣り合わせなのだということに、いまさらながら気づいたからだ。

これからこのざわめきが二週間も続くのだ。
とくに、アズキやふじ子がいる場所は、人通りが多く、子供や犬が無遠慮に入ってくる。

【ようやく安心できる人がきたね】

去年もこの時期を避けるために高齢のアズキを保護受け入れをすることになっていたが、緊急を要する猫たちが優先で、なかなか、アズキの順番が回ってこないまま一年が過ぎている。

それに、餌やりをする身にとっても、危険がます時期である。
なんで、野良猫に餌なんかやってるんだと食ってかかってくる人もいるからだ。

【いつもなら撫でてくれるのを待っているふじ子も、ご飯が終わるとすぐに茂みに入る】

勝手に餌を置いていく人もいて、やめるように注意をすると、わめきながら餌を蹴散らしていくこともあるし、睨んで詰め寄ってくる人もいる。

放置された餌をそのままにしておくとカラスがきて猫が怖がるので、そのたびに落ちた餌を一粒ずつ拾う。
地面に這いつくばっている自分に、腹を立てるなと言い聞かせて、惨めな気分をなだめることもある。

祭りの前日の昨日、野点の椅子やテントが張られた場所で、アズキはぽつねんと座っていた。
あしたから二週間、なんとかがんばろうね。

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