フェニックスと猫

【三尺玉の花火】

子供のときによく遊んだ線香花火には、独特の魅力があった。
小さな、パチパチと弾ける音の中で、最後、ぽとりと、赤い火のしずくが燃え落ちる。

男の子たちが面白がって遊んでいたのは、ネズミ花火。
爆竹のように激しい音を立て、逃げると、くるくる回りながら追いかけてくる。

子供のときには、近隣にはそれほど大きな花火大会はなく、せいぜいが兄たちが買ってきて庭で遊ぶ打ち上げ花火だった。
おとなになって、さまざまな花火大会を見たけれど、最近はあまりでかけなくなった。

人混みが苦手になったからだ。
それに、なによりも花火の打ち上げる音に怯えているだろう外の猫たちのことを考えてしまうからでもある。


とくに蓮華寺池公園の花火大会は、猫たちが居場所にしているすぐそばで打ち上げる。
古墳の丘のすぐそばでも打ち上げるので、猫たちのことが心配になって、朝から立ち入り禁止になる当日、こっそりと違う道を探して猫たちのところへ行ったことがある。

朝からのろしがあがっていて、猫たちの名前を呼ぶと、茂みの中で悲鳴のような声をあげるだけで、出てこようとしなかった。
茂みの中に餌を差し出しても、とても食べられる様子ではなかった。

猫たちは朝からこうして恐怖の中にいて、夜の本番のすさまじい轟音に耐えるしかないのだろうかと思うと、切なくてその場を立ち去りがたかったが、関係者にみつかると咎められるので、しかたなくそのまま無事を祈って帰ったのだった。

【色を出すのが難しいという青】

ここ3年ばかりはコロナのせいで、花火大会は中止。
ほっと胸を撫でおろしていたが、今年からまた再開するという。
しばらく間があいていたので、公園の猫たちにとっては、またえらい災難な夜となるだろう。

丘の上の猫たちに本気で里親をみつけてやろうと思ったのは、花火のときの恐怖に震えている猫の実態をみたからだ。
人間たちが花火に酔いしれて歓声をあげているそばで、恐怖にさいなまれている猫たちのことを考えると、とても楽しめない。

けれど、昨日、テレビ中継で見た花火は、圧巻だった。
長岡の花火大会の様子で、やはり、ここでも、外の猫たちはどうしているのだろうという思いを抱きつつも、「フェニックス」というタイトルの映像には目を奪われた。

【フェニックスというタイトルの花火】

満月の空に、不死鳥が舞う。
なにがあっても、また不死鳥のように空を飛べる日がくることを祈った。
誰かのために、自分のために、そして、猫たちのために。

※写真は、すべて、NHKBS放送長岡花火大会中継から。

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