スズと三毛子

洗濯物を干そうとしてベランダに出ると、三毛子が立ち上がってフェンスをよじのぼろうとしながら、必死になにかみつめている。うん、なんだ? 三毛子の視線の先を見ると、そこにはスズくんがいた。彼もまた身をのりだして三毛子をみつめ始めた。

そして、二匹はなんとか近づこうとするけれど、それは無理というもの。ごめんね、三毛子。牢屋の格子みたいだね。なんだかロミオとジュリエットみたい。

スズは三毛子に少しでも近づこうとしベランダをうろうろ。なんとか屋根に出ようとするも、断念する。それからまた、こちら側に戻って、二匹はしばらくみつめあっていた。すると三毛子は先にフェンスを降りてパフォーマンス。洗濯物をかけてあるフェンスをe行ったりきたり。

そして洗濯物の中から、またスズを眺めて、私とお喋り。会話はちゃんと通じてるみたい。

そしてそのあと、スズが先に家のなかへ・・・。三毛子はそれでもずっとスズがいたほうをみつめていた。

ここにフェンスを張っていなければ、三毛子は簡単に隣りの屋根まで飛び移り、スズと向き合っていたのだろうか。このあたりで、スズは番長クラス。よそからきた強者ノラもスズの迫力には叶わない。ううん、ロミオとジュリエットというよりは、縄張り争いに発展したかもしれない。つかのまのラブロマンスの夢だった。

それにしても、スズもモモも屋根から屋根へと飛び移ることはできない。三毛子だけの特技。なにかあってもいけないと思い、張ったフェンスだった。だが、三毛子はそれも難なく乗り越えてしまう。それで、改良に改良を重ね、三毛子との攻防を繰り返した結果のフェンスだ。それが今回は、なんだか牢獄の格子のように思えてならなかった。

隣りの家のスズとモモは、自由に外に出られるから、三毛子はいつもうらやましそうに見ている。そんな姿を見ると、出してやりたいと心がゆらぐが、押しとどめている。ベランダは日当たりもよく、風を感じることができる。それで我慢してもらうことにしている。なにしろ、三毛子は出たが最後、なかなか帰ってこないのだ。

この冬は寒く、公園の猫たちも日当たりを求めて移動する。ここの猫たちは、季節や時間によって、どこが居心地がいいか、知りつくしている。冬、姫は、夕方の日差しが届く斜面が居場所。餌をもらったあとは、そこで毛繕いをし、体を温めている。

短い日差しのもと、こんな顔をみると、ほっとする。

日が暮れたあとの寒さがやってくる前の、つかのまのゆったりとした時間だ。猫は、自分が与えられている場所のなかで、最も居心地のいい場所を探す天才だ。見習わなくては、と思うことがしばしばある。

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