なんで? こんなことってあるの?
神様、もう少しだけでも、たにゃを呼ぶのを待ってくださってもいいじゃないの。
たにゃの死を知ったとき、たにゃとパパさんを切り離す残酷な現実を呪いたくなった。
いろんなことが落ち着いて、二人は、これからようやく楽しい佳境に入るはずだったのに。
歌舞伎町という、猫にとっては劣悪な環境で長年生き抜いてきて、パパさんと出会い、パパさんとの楽しそうな暮らしぶりを、まだまだ見たかったなあという思いをどうしても納得させられない。
それともたにゃは、荒れていたパパさんを応援するために神様からつかわされてきて、そうして、パパさんが落ち着いて、壁を乗り越えたのを見届けて、それでほっとしちゃったのかな。
でもほんとに、たにゃはよくきてくれたよね。
だから、うんと、ほめてあげなくちゃね。
とてもいい子だねって。
パパさんのためだけでなく、私たちみんなが君の姿を見て、どれだけ励まされたことか。
困難を極めたであろうその暮らしぶりを初めて目にしたときは、声も出なかったほどだ。
ゴミだらけのこんな凄まじいところで、たった一匹で暮らしてきた猫がいるんだって思うと。
きっと長年のその疲れが、出ちゃったのかな。
でもね、最後はいっとう優しいパパさんと一緒でよかったよね。
パパさんの前にあらわれてくれてありがとう。
これまで頑張ってくれてありがとう。
私たちに、生きることのすさまじさを、飄々とした姿でさ、「別に~、たいしたことじゃないよ」って言いたげな顔でさ、伝えてくれた君のことは忘れようとしても忘れられないね。
パパさんのことは、私たちみんなで応援するから、心配しないでね。
そして、お空にたどりついたら、これまでのように、飄々とした姿で、パパさんを守ってくださいね。
さようならなんて、絶対に言わないよ。またね。