ハードルがどんどん高くなる。

夏至も過ぎて、ほんのわずか、日差しの角度が変わった気がします。
この季節、蓮華寺池は蓮の葉に覆われて、点々とピンクの蓮の花。
蓮は早朝に、ポンと音を立てて咲くというが、まだその音を聞いたことはない。

早起きが苦手な私が、このごろは朝な夕なに公園通い。
けさも5時半ごろにシロの様子や捕獲器を見に行くと、思いがけず、広場にシロがいた。
私との距離を戻してくれるかと期待し、マタタビをふりかけた餌をシロの近くに置いたが、シロは鼻をひくひくさせただけで、食べようとしない。

【2020年6月ごろのシロ】

おかしいなあ、朝はお腹がすいているはず、いつもの餌やりさんがくる時間にはだいぶ間があるし。
そう思いながらふっと足許をみると、猫の缶詰が転がっていた。
シロが食べたばかりのようだ。そりゃあ、もうお腹がいっぱいだよなあ。
餌をやった人は缶詰をあけ、容器に移すこともなく、そのまま置いて立ち去った様子。なんと、非常識な。

【今日、朝日の下で】

前日の夕方も、ちょうど現地につく直前に、誰かが餌をシロに与えていて、シロは食べたあとは茂みに入って寝てしまった。
以前からその人には事情を話して協力を求めているが、あまり効果はない。
それで夕方は、その人がくる前に行かなくてはと心づもりをしているのだが、モタモタしていると、たいてい後になる。

そして、けさはシロの様子をみるために、しばらくととどまっていた。
すると、つぎつぎとシロを探している様子の人がくる。いつもシロが潜んでいる茂みを覗いたりうろうろしたり。
えっ、こんなにもシロに餌をやっている人がいるとは。これじゃあ、いくら餌を置いたところで捕獲器なんかに入るわけがない。
そう思っていると、そのうちにゆっくりとあたりを見回しながら、「シロ、シロ」と叫んでいるおじいさんがやってきた。

話を聴くと、毎朝早くに公園にきて、もう何年もシロに餌をやっているのだという。
それですかさず、「シロはガンにかかっていて、なんとか保護して病院に連れて行きたいと思ってるんですよ。捕獲器をしかけているので、餌をやるのは少しのあいだ止めて頂けませんか」と言うと、
「あれはガンじゃあねえよ。他の猫と喧嘩して耳がちぎれて、そこからバイキンが入ったんだよ。だから、そのうちに治まる」と反発する。
「治らないですよ、あれは。このまま放っておいたら、顔や眼にもいくそうです。そうなる前になんとかしてやりたいんですよ。お願いします」
そう説明しても、合点がいかない様子で、あたりを見回しながら立ち去った。

【シロのティリトリーの隣にいるモミジ。いつもシロが負ける。】

シロがいるあたりはちょうど古墳の丘へと続く坂道付近。それで、通りすがりに餌を置いて行く人がいるのだろう。
それでも雨が降るときにはあまり人が通らない。そんなとき、シロはよく声をかけてきて餌をねだったものだ。

【チビとまる子が5年暮らした古墳の丘】

坂道を上って行った先には古墳の丘があり、そこにいたチビとまる子の見守りをしていたときにも、似たようなことがあって、餌を勝手に置いて行く人たちに手を焼いた。

カラスが集まり、イノシシもくる。ちゃんと餌をやる人がいるからと貼り紙をすれば、二日もしないうちに剥がされる。それでもまた貼る。また剥がされる。繰り返される果てしない戦いのあと、ならばと針金で止めてすぐには剥がせないようにしても、針金が切られているのをみて恐怖を覚え、諦めたこともあった。

【シロも、アズキのようにこんなだったらな。すぐに穏やかな暮らしに入れるのにな。】

飼うという責任を負わずに好きなときに餌をやるという行為、いつでもやめられる身勝手さ。そんな人々に腹を立ててもきりがない。
もう外の猫に関わるのはやめようと思っていたのに、シロのことを放ってはおけなくなって、そしてもがいている日々だ。ツイッター上での応援の書き込みや、ブログのコメントなど、会ったこともない人たちの温かさが身に沁みる。
やっぱ、人間ていいな。ありがとうございます。

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