孤独なオリンピアン

怖い、逃げたい、不安!
試合を前に、そんな本音が吐き出されることもある、オリンピアンたちの言葉。

だけど、彼らは逃げないし、たとえ調子が悪くても最後まで戦う。
たぶん、そういう姿に、みんな惹かれるんだよね。

天才、逸材、といわれる彼らにも、自分たちと共通する感情があって、そしてそれを乗り越えてきたのだと思うと、なんだかほっとして、だから応援したくなる。

彼らも、同じ人間なんだなあって感じたあとで、でもどんなに不利な状況に追い込まれても逃げずに戦う彼らに畏敬の思いが湧きあがってくる。

【野を走る姿は、まるでトラのよう! 猫リンピックがあれば、きっと金メダル】

スケボーで最後に逆転し、金メダルを獲ったときの堀米の言葉もすごかった。
「1パーセントの希望に賭けた」
そんな確率の低い賭けに買って、金メダルが獲れるなんて奇跡のような気がするけれど、きっと彼には1パーセントの道筋がはっきりと見えていたんだろう。

卓球の早田選手は利き腕に怪我をしながらも、痛み止めの注射を試合の5分前に打ち、三位位決定戦に臨んだという。
接戦を続けながらも最後は気力で勝って、銅メダル。

金メダルには届かなかったが、値千金のメダルとなって、彼女は勝った瞬間、床にへたりこんだ。
自分のなかのすべてを使い果たし、精根尽き果てたという姿で。

【あたしはここの女王よ! 運の強さは金メダル】

運は、心の強さから呼び込むもの。
ならば、やはり、常人とはかけ離れた強さを持っていなくては戦えない。

才能だけではだめなんだろうな。
それにしても、どの人も、鍛え抜かれた肉体のきれいなこと。
心も体も鍛えぬいた先に、しかし、怪我や思わぬアクシデントもつきまとう。

早田選手は試合のあとのインタビューで、思わぬところで神様に意地悪をされたけど・・・と言った。
気まぐれに意地悪をする神様も、きっと早田選手の気迫と意地にちょっとこれは、と感じるところがあって、最後は手を差し伸べてくれたのかもしれない。

【ううん、お腹がつかえて腹筋ができない~】

柔道で金メダルを取った角田選手は、男女混合チームの試合でも二階級上のクラスの人と闘い、鮮やかに勝った。
東京オリンピック代表試合のときには、阿部詩選手に敗れてこの階級ではだめだと思い知り、体重を落として一段下の階級に移ったのだと、淡々と話していた。

災い転じて福。彼女は、挫折を挫折のままで終わらせなかったのだ。

神様はきっとどこかにいて自分たちを見ていると感じることがある。
だから、なにかあっても、ああこれは神様に試されているのだと考えてしまうし、もしここで逃げ出したなら、今度はさらに嫌なことに出会うかもしれないと怖れる。

大観衆の眼にさらされ、波のように押し寄せてくる歓声やブーイングの中、たった一人で戦う彼らに、テレビの前にいる私たちはドキドキする。
そして、メダルを逃した戦士たちの涙を見て、敗者が味わう心の渦巻きをみる。

【なにも、こんなに危ないところで寝なくたってと思うけど、ミーナはバランス神経が抜群】

パリでのすべての戦いが終わるころには、この夏の気違いじみた暑さも少しおさまってくるだろう。
季節が過ぎるころ、この夏の戦士たちの思いは私たちにもなにかの足跡を残し、それは、すっかり忘れていた情熱の扉を開ける気にさせてくれるかもしれない。

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