ふじ子の月命日、白いカサブランカを買い求めて、いつもふじ子が寄り添っていた藤の木の下に添えた。
菊の花にしようかと思ったが、お寺のご神木である松の木のそばで、ひっそりと一人で逝ったことを思い、せめて華やかな花を添えてやりたかった。
なぜ、アズキのハウスのそばに設置してあったハウスに入らなかったのか。
誰も使っていないハウスに、ふじ子が入っていたのを一度だけ見たと言う人もいたのに。
ふじ子がアズキに遠慮をしていたのは知っていたけれど、そこまでとは・・・。
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ふじ子は要領が悪くて、不器用だった。
そんな性格が災いしたのかもしれない。
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階段が好きで、気がつくと、階段のそばにいたり、階段を上ったりしていた。
だから、今頃はきっと、天国へと続く階段を上っていることだろう。
途中で振り返ることもなく、一心に。
ふじ子はそういう子だ。
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ときおり私が後を追っていくとふじ子は耳だけ傾けて、ほっとするのか、また上り始める。
ずんずんと。
ふじ子~と名前を呼ぶと、ちょっとやかましいほどの声で答える。
「またなにか、くれるの~」とでも言っているようだった。
とにかく食いしん坊で、アズキ先輩と一緒に餌をやっても、さっさと先に食べ終わり、じっと私をみつめる。
おかわりがほしいのだった。
そうして、歯が悪いアズキバアバにちょっといいものをやっていると、そちらをうらやまし気にみつめる。
なんだか気がとがめてきて、同じものをふじ子にもやると、またすぐに食べ終わり、じっとみている。
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食べるときの二匹は、初めはずいぶん離れていたが、そのうちにぴったりと並んで食べるまでになった。
とてもいいコンビになりつつあって、そのほほえましい姿をみるときは心が安らいだ。
それが今は、突然に、ふじ子の姿が消え、数日してアズキ先輩も具合が悪くなって保護をされ、今は里親さんを募集中だ。
今、二匹がいた場所に行っても、転がる枯葉の音がするだけだ。
姿が見えない時に名前を呼ぶと、山の方から転がるように急いで駆け降りてくるふじ子の姿はもうない。
そして、ひとときの触れあいが終わって立ち去る私の姿を藤の木のそばでじっと見送ってくれることも。
ふじ子は、天国へと続く階段を、もう戻ってはこれない高さまでのぼっているんだろうね。
バイバイ、ふじこ。
私も元気になるからね。
あとは、アズキ先輩に里親さんがみつかるといいね。