1000円の誘惑

ちょっと前までは、といっても、たぶん3年くらい前までのことだろうが、1000円で買えるものは、今のたぶん倍くらいはあったろう。
とくに野菜は。

去年あたりから野菜が異常に高くなって、今年はさらに上がり、1000円で大根とキャベツを買うと、あとはもうほんの少ししか買えない時代になってきた。

さらには米の値段も上がり、卵も上がり、小麦も・・・。
数えあげれば、あれもこれもと、きりがない。

【うっかりしていると、扉をあけてしまうミーナ】

野菜売り場の前で溜息をついている同年代の人をみかけると、(たぶん年金世代だろう)私もつい溜息をつきたくなる。
あと1000円を足せばいろいろ買い物かごに入れられると思うが、ここは我慢。
どうしても必要なものだけを買うことにする。

そんなこともあって、ちょっとした用事にも歩いて行くことにした。
歩いて行くことにすると、買い物の量を厳選しなければ重くて持ち帰れなくなる。
買い物の抑制にもなるし、運動にもなる。

それに、車で走っているときには気づかない発見もある。
老体のマーチはいろいろと整備して、もう一度だけ車検に出すことにしたが、徐々に、車のない暮らしにシフトしていくことにしている。

【歩いていて、みつけた山茶花 赤の中に一つだけ白が映えていた】

誘惑を抑えるのと計画的な買いものをするために、食品はコープの配達にしてもらい、なるべく店には行かないように心掛けている。
嗜好品など、見ると欲しくなるのが、店に行かないことで抑えられる。
結果、菓子など甘いものは控えるようになった。

1000円くらい、と思う人もけっこういるだろう。
以前の私もそうだった。

でも、一日の1000円を月に換算すれば、30000円になる。
私は、お金というものを舐めていたのである。

【古墳への山道の木々も色づいてきた】

そのせいか、今はその1000円の価値をいやというほど思い知らされている。
あと1000円を足せば手が届くようなものが、そこにもここにも待ち構えている。

舐めていた1000円の誘惑を退けるのは、結構な辛抱がいる。
ただし、ここぞというときには、使うことにする。

たとえば、これまで通っていた美容院はカット代が2000円だった。
それをプラス1000円にして、美容院を変えた。
それでも、一般の美容院に比べれば安いほうだろう。

結果、鏡をみるたび、気に入らないカットにイライラしなくなり、手入れも楽になった。
不思議なのは、カットがうまいとよくまとまるから、時短にもなる。

毎日、朝からご機嫌でいられることの一つになっている。
それなら、1000円の価値は何倍にも増すだろう。

【陽だまりがあったかいね】

なにしろ、この物価高はおいそれとは終わらないどころか、ますます上がる様子だし。
だからといって、ただやみくもに節約をしても続かない。
けれど、これだけはというものには使うと、わりと頑張れる。

というわけで、健康と節約のために歩くことで足腰は鍛えられ、気分もよくなって、体の調子もあがった。
年金は目減りする一方だけど、楽しく暮らせる方法をわずかでもみつけていくのが日課になった。

これって、なにかの修行かなあ、それとも、昔の報いかなあと思いつつ・・・。
因果応報、自業自得…そんな言葉が浮かんでくる。怖っ!

【二階の窓から屋根に降りたミーナ、戻れなくなってわめき、ハシゴをかけた】

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