強運の猫、二匹は、初めは親子の関係を保っていたが、そのうちに、相棒のような存在になっていった。
チビがまだ子猫のころ、まる子はいつもチビのことを気にし、チビもまたまる子のそばを離れなかった。
初めてみたころのチビは、とてもはかなげで、まだまる子のおっぱいをまさぐっていた。そして、まる子はかなり痩せていた。お腹を空かしているようにみえ、道の端には魚の煮つけみたいなものなど、人間の食べるものが散らかっていて、虫やハエがたかっていた。それをみて、放ってはおけないと思い、通い始めた。
そのうち、まる子は丘の上の人気者になっていき、いろんな人から餌をもらうようになり、どんどん太っていった。
チビは餌を食べたあとのブラッシングが大好き。とても気持ちよさそうな顔をし、ゴロゴロと喉を鳴らす。頭を揉むようにマッサージされるのも大好き。機嫌がよいときは、私の歩く足に絡みつくようにして先導した。
そして、こんなふうに、二匹は餌を食べたあとはよく会話するようにしていた。
まる子は、ときにこんな顔をして笑わせる。顔もかわいいが、性格もおもしろい。嫌なことがあっても、チビまる子の姿をもていれば、気持が安らいだ。
まる子は、よく東屋のあたりから下界を眺めていた。まるで、自分が住んでいた家はどこかなあと探すようにみえたものだ。遠くに富士がみえる。帰るときには坂道の上から見送るのが習慣になっていたが、ときおり鳴きながらあとをついて降りてきた。そのときの辛さを思いだすと、今でも胸が締めつけられる。
その点、チビはあまり後を追ってこないので気持が楽だった。ここで生まれたチビは、まる子の姿さえあれば、それで十分だつたのだろう。そして、成長するにつれ、風格を放つようになった。まる子がいなくなってからは、落ち着きなく、点々と居場所を変えるようになった。
野性に目覚め、古墳の上を疾走し、ヘビや鳥、バッタ、カエルなど、てあたりしだいに捕獲するようになっていく。蛇は、何度も地面に叩きつけられ、そしてまた空に放り投げられた。
かと思うと、こんなかわいい姿を見せたりもした。
木登りも得意で、餌を塗べ終わると木に登る。まるで、ご飯のお礼にちょつと登ってみせるからねえ、みてみて、と言いたげに。
まる子、雨の日には、餌を待っている間、こんなところで雨宿りをしていた。不憫なような、愛おしいような・・・。
石の上に座っていると、ぴったりと寄り添ってくるまる子。そのぬくもりが今でも体に染みついている。