日本平の夢テラスから富士をみると、宙に浮いているようにみえる。稜線が雲に隠れているせいなのだが、位置的にそう見えるのだろうか。前にきたときもそうだった。
今日、行くはずの場所はそこではなかった。途中の道からみえた富士があまりにきれいなので、予定を変更して日本平にした。途中の日本平動物園にもひさしぶりに寄れたらと考えていたが、あいにく、今日は休み、との看板が出ていた。レッサーパンダの赤ちゃんが生まれたというニュースを見て、ぜひ行きたかったのだが。
なので、帰りに三保の松原に寄ってみると、雲をはさんで稜線がみえた。きっと夢テラスは標高があるから、雲から下がみえなかったのだ。龍のようにみえる流木を前に、富士がみえ、海は晩秋の光を浴びて輝いていた。
波打ち際へと続く砂浜の少し手前に、羽衣の松がある。たしかに、この風景とこの松並木なら、地に降り立った天女が羽衣をかけたくなるのもわかるような・・・。
そして、御穂神社へと続く神の道を渡って行く。平日の夕方は人も少なく、神の道もゆるりとした雰囲気だった。
帰る前に茶店の前を通ると、店の人に呼び止められて一服することに。名物安倍川餅にお茶がついて、一人分280円。ならばと入ってみると、これがけっこうおいしかった。
店主さんいわく、うちの安倍川餅は数々ある安倍川餅のなかでも、特別なんだという。なにがっていうと、あんこもきなこも国産で、いろいろな賞をもらっているのだそうだ。説明が長々と続くので時間が気になるが、途中で立つのもなんなので、最後まで聞いてから礼を言って席を立った。
でかける時には、三毛子はいつもこんなふうにして見送ってくれる。そして、帰った時にも同じような格好で待っている。ずっとこうしているとは思えないけれど、同じような体勢で迎えてくれるので、つい、ずっと待っていてくれたのかなあと思ってしまう。
かと思うと、急に家の中を走り回り、手製のキャットタワーの上でゴロリ。落ちるよ、と声をかけても動じない。
テラスのベランダのフェンスを走り、階段を駆けおりたり昇ったり、起きているときはせわしなく動いているか、何時間もじっと窓の外を眺めているかのどちらか。動と静が極端な猫だ。それで、こちらもついてゆくのが大変になるが、おもしろい。
日々、退屈しないでいられるのは、たぶん三毛子のおかげだろう。体を抱え上げることまではできるが、まだ抱っこもさせてはくれないし、誰かがくるとスリスリするどころか、ぷいとどこかへ姿を隠してしまう。そんな猫は、ペットとしては落第なんだろうが、飼い主を面白がらせてくれるという点では、ピカイチなんではないかと思っているのです。
そんなふうに、悪いところといいところは表と裏なんだと考えると、なんだかゆうるりと気持が楽になってきます。