希望と落胆

蓬莱橋

希望のつぎは落胆。落胆のあとに、かすかな望みを繋ぐ。このごろはその繰り返しだ。
シロの捕獲、一度目は、タモで試して入った。ほっとしたのもつかのま、シロが暴れて網が破れ、失敗。
網の強度に問題があったのと、瞬時に次の手に移らなかったのが原因だった。

【とてもご機嫌だった頃のシロ】

かえってよくない結果に。それでも、翌日にもシロは呼ぶと出てきてくれて、離れたところに餌を置くと食べてくれた。
そしてその次の日は、前のような近さまではいかなかったが、かなりの近さまできてくれた。

けれども、左の耳の傷口からは滲んでいた血が少しずつ流れ出すようになっていた。
これまではときどき引っ掻く程度で、それほど痛がっている様子はなかったが、きのうは痛いのか、しきりに気にして、そこに、蚊がたかる。

【いつも崖のところで見下ろしているのが、シロの日常だった。】

これはもう、急がなければと、捕獲器をしかけることにした。
だが、公共の場所で、しかもいろいろな人が通るところでは、かえって危険がともなう。
それで、夜遅くにしかけて、朝、夜が明けるころに回収することにした。

【このころからすでに症状は進んでいた。薬を渡したのはこのころ。】

さらに、餌やりさんに再度交渉。もう、しのごの言わせないという覚悟で臨んだ。
みんなが怖れるリーダー格の人とも対決するつもりで。
すると餌やりさんは、そのトラブルメーカーのリーダーには内密にということで、シロをみかけたら様子を教えるという約束を取った。

そして、祈るような気持で、けさ、まだ薄暗い公園に行くと、しかし、シロは入っていなかった。
落胆して回収し、帰ってきた。

白い体毛に血がにじんだシロの姿。とてもみてはいられない。
餌やりさんは、おどろおどろしくてシロの姿を見たくないという。仕事をしている身で、餌やりのほかに健康管理などしている時間もないと。
でも薬は飲ませるからというが、いまさらという気がした。
だったら、せめて邪魔はしないで、ということで了承を得たのだが、それほど深刻には受け止めていないようだ。

【傷ついた体で、ご飯を食べてくれていた。】

昨晩仕掛けるときに、かすかにシロの声がしたように感じた。
かぼそい声で、お休み、といっているような気がした。

なぜもっと早くに対処しなかったのかと悔やまれる。
餌やりさんのバリアが厳しいのもあったし、状況はたしかに悪いことばかりだった。
ここの猫はここで逝くの自然だという、おおかたの意見にも流されて、覚悟がつかなかったのもある。

シロはモミジやアズキにくらべると、人との距離をとるから、なかなか触れることができない孤高の猫。
けれども、捕獲チャレンジの前くらいまでは背中を撫でても逃げないくらいに近くまできてくれていた。
これまで人の手の暖かさを知らなかったシロにも、少しでも人のぬくもりが伝わったのだと思いたい。
背中を撫でられるしあわせを感じてくれていたなら。
それがかすかな希望だ。

蓬莱橋を下からみたところ。島田市 公式ホームページより


今晩は雨が激しいらしい。それでも、雨除けをかけて捕獲器を置いてみようと思う。せめて、柔らかいシートを敷いたそこで雨をしのいでくれたら・・・。祈りたい。

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