ベランダに出ていた三毛子が騒ぐので、外に出てみると鳥がいた。鳥を見逃さまいとして、三毛子は手摺の上を行ったりきたり。それを眺めながら、おまえは朝から元気よのう、とつぶやいて、思わずひょいと頭に浮かんだことがある。そうだ、なにか小さなことでいいから気持が変わることを始めてみよう。
それで早速、家の中のプチリフォームにとりかかった。まずは、気になっていた玄関から。これまでは、雨ガッパや上着など、濡れたものもそのまま脱いでかけられるようにしていたのだが、もう、雨の日に古墳の丘に行かなくてすむようになったので、すっきりさせようといろいろ工夫。
とりあえず、今の季節に使うスカーフやバッグ、帽子などを選び、使わないと思うものは捨てた。出かけるときに身につけるもののコーナーを作ることで、でかけるまでの時間を短縮できる。大阪の友達が作ってくれたアマビエちゃんも鎮座させた。
バッグは、よく使うものだけを選び、スカーフの奥にかけられるようにフックをつけた。
下駄箱の上に、めでたい絵柄の布をかけてみると、一気に玄関が明るくなって、正解。そして、地味にクリスマスの飾りも少し。
さらに居間には、しばらく出すことのなかった父の書を飾ってみた。初めは和室の床の間に飾っていたが、そこを手製のクローゼットにしてしまったので、飾る場所がなくなり、それで、居間の殺風景な壁につりさげてみた。
居間には合わないだろうなあと思っていたが、意外としっくりときて、おちついた部屋になった。
父は仕事上の事故で右手の指を2本なくし、その手で筆を持っていた。定年になると同時に書き始め、没頭するように部屋に籠っては書いていた。
私はどうも父親の性格を受け継いだらしく、なにかに夢中になると、途中でやめることがなかなかできない。それで、蓮華寺池公園に行くのも2日ばかり休み、今日行ってみると、池は様変わり。池を覆っていた蓮の葉がみな取り払われていた。毎年の行事。これを境に、いよいよ公園も冬の風景に変わっていく。
風が吹き抜ける古墳の丘も、すっかり初冬の風景。私にとっては、チビとまる子がいない6年ぶりの冬だ。
坂道で会った人が、ここに猫がいないと、やっぱり張り合いがないねえ、と寂しそうに笑いながら立ち去って行った。チビまる子をめあてにして坂道を上ってやってきた人たちは、きっとたくさんいただろう。チビとまる子は表彰ものだな。
たしかにチビもまる子もいない風景は寒々として、同じ風景とは思えないほどだ。けれども、ここで二匹が冬を越さなくてすむのは、なんとありがたいことか。吹きつける北風に身を低くして、寒さをこらえる猫たち。その姿を後にして帰るのは、かなり辛いことだったから。
そして、いよいよ富士も、その姿をよくみせる季節がやってきた。ここにくれば、いつもいてくれる富士。これもなんと安心することだろう。