毎日、暑っ! 古墳の丘に登る坂道でも汗、汗。それで、せめてうちわでも、と思い、ためしに作って毎日登っている。これがけっこう、役に立つ。そよ、とも風が吹かないときには、特に。
100円ショップで買った無地のうちわに、チビとまる子の写真を貼ったもの。チビとまる子のことを知っている人たちは、これをみて、あら、まる子、元気そうねえと言って笑う。
そのまる子、ようやく、自分からニャンコタワーのてっぺんまで登るようになったみたいだ。これで運動不足も解消かと、里親さんは喜んでいるが、さて・・・? スイカが届いたときのリアクションもおもしろい。
まる子、今年は涼しいところで過ごせてよかったね。こっちは、毎日、汗だくで登ってるよ。古墳の丘にはあいかわらず、いろんな人がやってくるよ。
汗をかきかき、猫を抱いて丘の上まで登ってきたお兄さん。丘の上まできたら、リードをつけた猫をおろし、思いきり遊ばせてやろうと考えていたらしいが、下におろしたとたんに猫は腹ばいになって、匍匐前進。怖がって前に進まない。
猫の種類はソマリ。いかにも、という猫。瞳がことのほか美しく、ため息がでるような猫。そんじょそこらの猫とはちがうわ、というオーラを放っている。
そのとき、そんじょそこらの猫であるチビは餌を食べ終わり、くつろいでいるところで、草の陰にいた。そのままやり過ごすかと思ったら、案の定気づいて出てきて、おまえはどこのどいつだ? という顔。
犬も歩けば棒にあたる、ということわざがある。カルタによく出てくる言葉。それをもじって、猫が歩けば猫にあたる。猫は同類の猫の気配に敏感だ。人の眼からみると猫の姿はみえないのに、猫がいると、どこからか猫が出てくる。そして、唸りあいが始まったり、やあ、と挨拶をかわすようなしぐさをしたり。
ソマリのお兄さん、しばらくは匍匐前進の猫を見ていたが、諦めてまた抱き上げた。
なかにはこんなふうにおぶってくる人もいる。
猫ではないが、ドローンを持って飛ばしにくる人やラジコンカーを走らせて登ってくる人もいて、猫だけでなく、人もさまざま。おかげで、チビは退屈しない。
この、かわいいが緻密にできているラジコンカーは、下からずっと走らせて坂道を登ってきたのだそうだ。遠目には、犬でも連れているようにみえたが、ちがった。走っているその姿はかわいらしい。
すっかりまる子のいない暮らしにも慣れて、チビはこれまで知らなかったことを知り始めている。最も大きな変化は、甘えることを覚えたことだ。これまではまる子が甘えを独り占め。チビは離れたところで毛繕いなどしながら、まる子のかげで、たそがれていた。
チビは、まだ生まれてまもないころ、餌をやるときに傘をさしてやると、不思議そうな顔をしては出たり入ったりしていた。傘の中に入れば雨にあたらないということを知ったことから始まって、最近は、人にちやほやされる楽しさも知ったようだ。
初めは、餌をやるときにさえ、離れたところにいて近づかなかったチビが、取り巻きの人たちに囲まれてものんびりしているなんて、少し前までは考えられないことだ。
そうして、まる子がそうだったように、アイドルまる子の代わりを果たしつつあるようで。
三毛子に買ってやったものを試しに持って行くと、さっぱり興味を示さなかった三毛子とは逆に、チビは心地よさげに頭をのせて眼をとじる。石の硬さしか知らなかったのにね。枕の心地よさも知ったんだね。
きのうは満月。このところあまり見なかった月に、ひさしぶりに出会った。夏の盛り、気持も体もうっとうしい季節に、月はさらりと涼しげな姿。空の色合いもいいようで。