きのう、手術後のシロにようやく会えた。
日向っ猫さんちの別宅から自宅に移動したばかりで、ちょっと気の毒だったかな?
日向っ猫さんちには、他にも猫が結構いて、その猫たちが新入りのシロに興味深々の様子。
前からも後ろからも横からも、みんな挨拶をしにきたり覗きにやってきたり。
なので、シロはケージの隅っこに固まっていた。
初め、日向っ猫さんは、別宅の、病気を抱えている猫たちを置いている家でシロも一緒にと考えていたようだが、扁平上皮癌の手術がおわって一月後の経過もよく、検査の結果もよかったので、普通の猫たちと一緒に自宅で世話をすることを選択したという。
私たち(餌をやっていた人と市役所の人、計3人)が訪問する前日にシロのお引越しをしたそうだ。
その晩は、一晩中、夜鳴きをしたということで、私たちが行ったときにはとても眠そうだった。ともすると、瞼が落ちてくる。
シロ、と呼びかけてもほとんど反応がなく、じっとこっちをみつめて、「あんた、だれ?」という顔。
もう忘れてしまったのかなあ・・・。
まあね、シロにとってはこのひと月は、怒涛のひと月だったわけで、なされるままにしていなくてはならなかったんだから、無理もないよね。
このひと月だけでなく、6月からの三カ月は、これまで優しかったはずの人たちが急に自分を捕まえようと激変し、シロは捕獲されまいとして、餌を貰うときにもあたりに警戒をし、いつでも逃げられるようにと腰をおろさずに食べていたわけで。
それからはもう、シロにとっては悪夢のような日々だったかもしれない。
なんだかわけがわからないところで、麻酔から眼がさめたとき、シロは恐怖しか感じなかっただろう。
手術後も痛みはあっただろうし、カラーを装着した暮らしも3週間と続いて不自由だったろう。
けれど、それを乗り越えた今、シロの顔は和らいできた。
もともと、純白の美しい毛並みとオッドアイを持っていたシロは、もとの毛並みを取り戻し、日の光が差すケージの中で、澄んだ青と琥珀色の瞳がきらめいていた。
医者の診断では、やはり捕獲に手間取って遅れたぶん癌の進行が進んでいて、すべてを取り除くことはできなかったそうだが、今は傷口も乾いて状態がいいので、しばらくはこのまま様子をみるのだという。
初めは抗がん剤治療をするという予定だったようだが、それも様子見ということで、とりあえずは新入り修行に励む毎日となるだろう。
公園にいたころ、シロ、と呼ぶと、あたりに警戒しながらおそるおそる出てきたシロ。
耳をかきむしり、血をにじませていたシロ、カラスがすぐに寄ってくるので逃げ惑っていたシロの姿はもう過去のもの。
今のシロは、好奇心旺盛な先輩猫たちの洗礼を受けけながら、徐々に自分の場所を確保するために修行の日々。
それにしても、おまえは強い運を持ってるんだね。
以前、私がまだ公園猫のことを知らない頃の話だが、シロのまわりにはほかにも白猫が数匹いたという。
けれども、心ない人に毒餌を食べさせられて死に、生き残ったのはシロだけ。
そんなこともくぐり抜け、生き抜いて、今度もまた頑張った。
あと、もうちょっとだよ、シロ。
これからは日のあたる部屋での、穏やかで賑やかな余生が待っているんだから。