荒れて不安定だった天気もようやく落ち着いてきたようで、10月は、暑くもないし寒くもなく、ちょうどいい季節。
春もわくわくするが、秋のこの月は、春よりも気持が落ち着く。
むしろ、こんな季節に出逢いがあれば、それは、魅惑的な日々になるんじゃないかな。
季節は冬に向かい、野山は少しずつ色を失っていく。
だから、人は人恋しくなって、温もりのあるところへと向かう。
なんとなく、ものを見る視線もちょっと変わってくる。
上から照りつけていた日の光が傾いて、日差しが優しくあたりを包みこむからだろうか。
澄んだ大気の中、遠くへと視線が伸びる。
花も蝶もそろそろ終わりだけれど、公園のフジバカマは少しずつ咲きだして、いよいよアサギマダラを迎えるために、準備万端。この花々に群がる美しいアサギマダラは、少しだけ羽を休めて心ゆくまで蜜を吸い、そうして、暖かい南をめざして行く渡り蝶だ。
そして、今日は黒いトンボに出会いました。ほら、体がぴーんと伸びて、姿のいいこと。
これを見た人は縁起がいいそうで、きっとシロのこともうまくいくことでしょう。
美しい蝶たちも、最後の季節を迎えてひたむきに生きている。
そういう生き物たちを見ると、やはり、心打たれて誰かとほんの少しの会話をしたくなる。
これまでの年のこの時期は、日暮れが急に早くなって古墳の丘からの帰り道は足元が暗くなり、降りていく坂の下には、志太平野に広がる町並みが、点々と広がる明りと共に開けていたものです。
そして、まる子たちがさびしそうな声をあげて私の後を追ってくる時には、もう心がちぎれそうになりながら坂道を降りたものです。
その声を振り切って先を急ぎながら、「おまえたちも、あの明りの灯るところに帰りたいんだよね。きっときっとそうしてやるからね」と誓ったのでした。
そして、この夏は、シロとの駆け引きの日々。
捕獲に失敗してからは、なかなか出てきてくれない日々、やぶ蚊に責められながら、じっとシロの気配を探っていたっけ。
諦めて帰りかけると、ニャッという声がする。あのような日々のあとの今の静けさ。
秋はひさかたぶりに、私のそばに静かに寄り添ってくれて、道端の小さな花にさえも手を差し伸べているのです。
そして、シロちゃん。夜泣きでさんざん日向っ猫さんを悩ませているようてすが、病院ではこんなにおとなしいそうですよ。まだまだ不安は残るけれど、あとのことはもう、神様に委ねることにしましょう。