赤と緑の関係

ちょっと、一人遊びをしてみました。
まだまだクリスマスには早いけれど、クリスマスの気分が好きなのです。
なんといっても、その明るい華やかさが。

野山も街も着るものも枯れ色になっていくなかで、赤と緑のクリスマスカラーはまわりを明るくしてくれるだけでなく、気分もあげてくれる。
でも、ちょっぴり、辛い思い出も、毎年思いだします。

それは、横浜にいたころの話、ちょうど街を行く人々がクリスマスプレゼントやケーキを抱え、急ぎ足で歩いて行く日のことでした。
同じ小説教室に通う、ある人と待ち合わせをしていたのですが、ずいぶんと遅れて彼女はきました。

そうして、きてすぐに、もうあなたとは連絡も取らないし、こうして会うこともないと言いました。

「なんで? 私があなたになにか悪いことをしたのかしら?」
いきなりの言葉に驚く私に、彼女は横を向いたまま窓の外を通り過ぎる人々を眺めているばかりで、なにも答えないのでした。
私には心当たりがなかった。

でも、私は嫌われることに慣れてもいて、ああまたか、という思いも沸き上がった。
それは小学生の時のことで、まわりのみんなから無視され、担任の教師にさえも嫌われてしまったことから始まる。

【ことのまま神社のクスノキ】

原因は私が書いた作文だった。
先生は、これはお前が書いたものではないだろう、お姉さんに書いてもらったんだろうと、みんなの前で言い放った。
姉は私と違って人気があったし、成績もよかったのだ。

それから私はクラスのみんなに無視され続けた。
田舎の小学校だから、クラスは一つ。
だから、何年も無視は続いた。

けれども、中学に行くと、他の小学校からきた生徒のほうが多かったから私の過去を知るものは少なく、けっこう友達もできた。
べつに取り入ったわけでもなく、さほどいい生徒でもなかったのに、先生にも気に入られて、なあんだ、あんなのたいしたことじゃなかったんだと思うようになり、それからは似たようなことがあっても、それなりに対処できるようになった。

それでも、おとなになってから面と向かって絶交を言い渡されたのはその時が初めてだったので、ショックを受けた。
流れてくるクリスマスソングも窓の外の華やいだ賑わいもすっと遠のいていき、一人、自分だけが取り残された気分になった。

二人とも無言のまま、しばらくすると彼女は立ち上がり、「だって私、あなたが気になって落ち着かないから」と言います。

すかさず私も反論しました。
「あなたは綺麗でどこにいても目立つし、それに小説も先生に認められている。なのに、私はいつもクソミソじゃないの。それなのに、なんで?」

実際、彼女は、なにをとっても私よりも優れ、男性陣からもモテたし、講師からも特別視されていたのでした。
だから、彼女の指摘は的外れで、どうみてもあべこべな話でした。

やがて彼女は、いきなり立ち上がり、私をみおろして、そうゆうところが嫌なのだと言いました。
「あなたは自分のほうが劣っていると言いながら、ほんとは、自分のほうが優れていると思ってるでしょ? あたしの力はこんなもんじゃない、先生だって見る眼がないんだって、そう思ってるんでしょ」

彼女はそう言って立ち去り、それっきり彼女とは会っても話をしない関係になってしまったのですが、あいかわらず彼女のまわりにはいつも人が集まり、華やかな存在のままでした。

そして、私は私で、気の合う人もいて、みんなからはちょっと離れたところにいたのですが、でも、お互いに相手を意識し、作品のできも意識しあっていた気がします。

あれからずいぶんと時がたって、人生も終末期に入ってきて、そうしてこんなふうに一人で赤と緑のものを飾っていると、華やかだった彼女のことを思い出すのです。

そして、彼女のことを意識してあんなに頑張れたのは、後にも先にもないことだったとも。
今の彼女は、娘夫婦やその家族との同居で、豊かで幸せに暮らしているらしい。

いかにも彼女らしい。きっと孫たちと過ごすクリスマスは賑やかだろうな。
相変わらず私は彼女のファンなんだなあと、そう思いながらも、オフハウスで買った真っ赤なマフラーと、100円ショップにあった飾り物と、友人が送ってくれたサンタのパッチワークを飾りつけ、あとはもともとあったもので賑やかに。

赤と緑。赤は彼女で、私は渋い緑。
どっちも好きな色。
勝ったとか負けたとか、そんなことはもうどうでもよくなって、私は私のささやかな幸せに感謝したくなるのです。

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