稲荷大明神は、公園の正面入り口を入ってすぐ右手にある。そこらあたりにたむろしている白黒猫のなっちゃんは、ときおり、猫大明神になる。まわりに比べて少し涼しいのかもしれない。なっちゃんという名前だが、堂々としたオスの猫である。
通りかかると、盛んに毛づくろいをしていた。横で、おばさんが案内係というか、この子のファンらしく、眺めている人に向かってなっちゃんのことを説明していた。そう、この猫はとてもやさしい猫なのだ。
去年の今頃、しっぽに深い傷を負った猫がまぎれこんできたときは、この、自分のティリトリーに彼を入れてやり、この祠の裏側にある寝場所を譲ってやっていたのだった。
なっちゃんに体の模様がよく似ていて、尻尾に傷を負っていた猫は、それでも元気で、カモなど追っていた。私が薬をもらってきて、池のまわりの猫たちに餌やりをしている人に託したその日に、またいなくなった。突然あらわれて突然消えた猫だった。その猫がいなくなって、なっちゃんはまた元の場所に戻ってきたというわけだ。
猫大明神の彼は、こうしてときおり遠くをながめている。
七月も終わり、池の蓮も盛りをすぎて、花を落としたあとは、こんなふうになっている。
そして、水辺には今年もカモの家族がはべっている。なっちゃんは、そばにいるカモやハトやカモメなどを追わない。なにか、なっちゃんなりの流儀でもあるのだろう。
もう死んでしまったが、ハチという名の白黒猫もこんなふうに動じない猫だった。風格があり、人気ものだったが、虹の橋を渡ってしまった。なっちゃんは、名前に似合わず、ハチの跡継ぎのような存在になりつつある。
毎日の暑さに、猫たちは夏バテぎみである。少しでも涼しそうな場所で体を休めている。
この猫は車の下でお昼寝
この猫は、草むらで寝ていたのを起こしてしまった。ごめんな。
丘へと続く坂道の、ひまわりの赤ちゃんもようやく目をさまし、開いた。丘の上まで汗だくになって行ったが、チビは雷の音に臆して出てこないし、まる子は誰かに餌をもらったのか、それとも食欲がないのか、あまり餌を食べなかった。
あちこちで、花も満開である。蝶もとんぼも飛び交っている。