4月といえば

4月は入学式とか入社式とか、いろいろイベントがあるはず。けれど、このコロナ渦のさなかではそういうだいじなことすら安易には開けなくなった。あたりまえのように人が集まって、さまざまなイベントを楽しんでいたことが、まるで遙かな昔のことのように思えてくる。

そしてこれは、それこそ遙か昔の写真。読売新聞とカネボウが共催したドキュメンタリーに入賞したときのものだ。女優の藤村志保さんも受賞なさって、一緒にインタビューを受けた。

藤村さんは、テレビでみていたときよりもずっと気さくで、物腰もやわらかで、手招きして一緒に写真を撮ろうとおっしゃった。

春は、私にとってなにかとよくないことが起きた季節。始まりは、大学の入試に失敗したこと。自暴自棄になり、母にだけは行き先を告げて家を出た。

ほかのみんなには、大学や就職先といった新しい場所があるのに、自分にだけ行くところがない。そのことに耐えられず、八戸からなるべく遠いところに行くことにした。

strawberry smoothie on glass jar
   Photo by Element5 Digital on Pexels.com

とりあえずは、大きな農家でのアルバイトをすることになっていた。父が定期購読していた「家の光」という農業雑誌で見つけたパイナップル農家の手伝いだ。神戸市の郊外、垂水区というところ。まわりは田圃や畑にかこまれていた。

部屋も与えられ、食事つきだったから心配はなかった。自分の家族からも、知っている人からも遠く離れた、遙かに遠い未知の土地は、私にとって一種の隠れ家みたいになった。

three plastic pineapple figures on white surface
           Photo by Jess Bailey Designs on Pexels.com

その農家は、パイナップルの栽培高では日本でもトップクラスの規模だったが、どこの馬の骨ともわからない娘を一時とはいえ、預かってくれたその家族のことをときおり思いだしては懐かしむ。ご主人夫婦には、小さなかわいい女の子がいて、その子と私はすぐに仲良しになった。

4月になると、八戸の駅からわずかな荷物を持って列車に乗り込んだときの気持や、それからずっとあとになってからだが、自分の書いたものを認めてくれた人がいたことなどを思いだす。陰と陽。ものごとはつねに二つがいりまじって起きる。陰ばかりでもないし、陽ばかりでもない。

そうやって生きてきて、今にいたって、そうしてやっぱり陰と陽が混在。それも、見方を変えれば、どちらがどちらともいえず、意外と陰が陽になったり、陽が陰になったりする。

【同じ木に白と赤が混在するツツジ】

まる子も、不運なことが続いたことだろう。捨てられて野良となり、居場所をなくして古墳の丘にたどりつき、三匹の子を生んだが、チビを残してほかの二匹は死んでしまった。

けれど今では丘の上の人気ものだ。通る人たちはまる子の姿がみえないと、気にして眼で探している。なんだか、癒やし様みたいになっている。

【いよいよ藤の花が咲きだした】

だが、冬の厳しい寒さにも耐えなくてはならないし、ときには意地悪なめにもあったりもする。それでも、そんなそぶりをみせないところはさすが。きっと胸の底に愛されているという安心があるからだろう。

また草が生い茂る季節がやってきた。ダニや蛇など怖いものが出てくる。せいぜい気をつけて、毎日、坂を登ることにしよう。猫用のダニよけの薬もさっそく用意した。

私が、家なき猫たちに眼を向けてしまうのは、あの、わずかな荷物を抱えて列車の窓からぼんやりと外を眺め、あてどのない暮らしに向かって旅だったときのことが底にあるからだろう。

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