昨日の風は強かった。
夜に入ってから急に風が強くなりだし、雨戸が鳴りだした。家が揺れている感覚があった。何かが飛ぶ音がし、そしてぶつかる音。耳をふさぎたくなるような風の音に、ただ家の中でじっとしているしかなかった。
チビまる子は、この嵐のなか、真っ暗な山のなかでどうしていいるだろう。気になって眠れなかった。そしてけさ、早くに、毎日、丘の上まで歩く人から、チビまる子は大丈夫だよという連絡が入った。ありがたかった。
今日は、少し早めに家を出た。いつものように池を回り、坂道にさしかかると、道のわきで何本も、木が根こそぎ倒れているのが眼に入ってきた。
たしかにすごい風だったけれど、これほどとは思わなかった。雨風に加えて、木々が風にうなり、バリバリという音があちこちから聞こえてくるなんて。チビまる子には、いったいどれほどの恐怖だったろう。しだいに足が速まった。
いかにも丈夫そうな杉の木があちこちで折れている。
折れた幹が裂け、三角形を作っている。風のすさまじさがわかる。
ひどいありさまの坂道をのぼって丘の上に行くと、二匹がいつものように駆け寄ってくるのをみて、ようやく安心した。
それほど変わった様子はない。けれども、帰るときは、昨日の夜の体験が怖かったのだろうか。しばらく離れようとしなかった。
帰り道、静岡に越してきたばかりのころの、やはり風の強い台風にあったときのことを思いだした。そのときは夫が留守で、家にひとりだったせいもあって、不安でしかたがなかった。思わず、そばにいた猫のマロンを抱きしめていた。おまえがいてくれてほんとによかったと、その体の温かさがうれしくてつぶやくと、マロンはキョトンとした顔でニャッと答えたのだ。