一度行ってみたかった白藤の滝。一年の三分の一は水量が足りなくて見られないという。二日前に大雨が降ったので、もしかして見られるかもしれない。そう思って行ってみたら、見ることができた。
途中の道は車が一台がようやく通れるほどの道。急勾配で路肩にはガードレールもない。沢には、アジサイが群生していた。みえてきた橋の手前に車を停めて歩きだすと、しだいに滝の音が近づいてきた。
文字も薄れた古びた木の看板をたよりに歩いて行くと、道はとぎれ、岩が転がっていた。
岩をよじ登って行くと、やがて小さな滝がみえてきて、その奥に見えてきたのが、白藤の滝。落差があるが、やはり水量が今一つだった。さらに行くと、大きな滝が二つあるそうだが、とても行けそうにないので断念した。
流れる水は澄み、あたりには、かぐわしい匂いが漂っていた。
その匂いの中で滝のイオンを浴びていると、体の隅々まで洗われるような気持になってくる。
物語に出てくる仙人なんかがいそうな雰囲気なのだ。
いったい何の匂いだろうかと、あたりを見回すけれど、花が咲いているわけでもない。なにかの樹木が発している匂いなのか。
えもいわれぬ匂いとは、こういう匂いなのかと思う。この場所を離れたくないような・・・。
そうはいっても、こんな山の中に仙人のようにいつまでもいられるわけもなく、たっぷりのマイナスイオンを浴びてから帰ることにした。
この景色をみると、だいぶ高く登ってきたのがわかる。
雨乞いの滝や行者の滝など、滝はほかにもいくつかある。今日はここだけにして里ににおりると、とりたての野菜や焼き立ての自家製のパンを売っているパーキングがあった。
新鮮な野菜を買っての帰り道、散歩中の猫に出会った。おう、なんか、雰囲気のある猫ではないか。車を降りて近づいていくと、向こうも近寄ってきてくれたが、ちょっとおっかなびっくりの顔。
外に出さないので、ときどきこうして、リードをつけて散歩しているんだって。表情がおもしろい。名前はカブちゃん。
我が家の昔猫のプリンとマロンは、大阪に引っ越したばかりのころ、リードをつけて散歩をしようとしたら、道に坐ったまま、決して動こうとしなかった。勝手に引っ越しておいて、こんなことまでさせるのかよ、という顔をして、マロンは怒った。プライドを傷つけられたのかもしれない。それでまわりにぐるりとネットを張ったが、じきに猫たちは飛び越えてしまった。
それまで自由気儘に暮らしていたのだから、無理もない。プリンは山形にいたころは、いつも裏の林の木々の下で寝ていた。プリンのこんな姿をみるといじらしかった。