フラワー

山形県の長井市に住んでいるとき、よく利用したのがフラワー長井線だった。その名のとおり沿線には季節の花が咲いていた。

※長井市のホームページより引用

山形新幹線ができる前は、フラワー長井線で赤湯駅まで乗り、奥羽本線に乗り換えて福島、さらに東北新幹線に乗り換えて東京駅まで行っていた。何度も乗り換えるのが面倒だったが、フラワー線の電車の窓からみえる景色はとても美しかった。天国へ続く道はこんなふうだろうかと思ったほどであった。

当時は息子が大学生だったため、たまに上京していたが、帰り道、電車の窓から、町を抱くようにして広がる飯豊連峰がみえてくると、ああ帰ってきたなあという感慨が湧いたものだった。玄関の扉をあければ、長井で出会った二匹の猫たちが真っ先に出迎えてくれた。

マロンは花が好きだった。

そして、蛇も好きだった。

よくこのテーブルの下に蛇を持ち込んでいて、知らずに部屋に入った私を仰天させていた。マロンに傷めつけられ、死んだふりをしている蛇を長い棒に巻きつけて、裏の水路に流してやると、蛇は水面で体をくねらせながら流れて行った。

あたしたち、似た者同士なんです。

横浜から山形に移住しての暮しは、想定外のできごともいろいろあって落ち込むことも多かったけれど、でも、風景のすばらしさは格別で、とくに、ようやく雪が融けて迎える春のすばらしさは、思いだすだけでもわくわくするほどだ。

※「久保の桜」 観光案内より引用

この桜は、国の天然記念物に認定されていて、樹齢は1200年だそうだ。すっかり老いて、枝はいくつもの支柱に支えられ、幹もあちこち瘤だらけだが、花の咲く季節にはきまって小ぶりの花をつけた。長井市から出てもう20年近く過ぎたが、桜の季節になると、この老いた桜を想う。

今は、温暖な土地で、チビびまる子のいる丘に通う毎日。ここにはいつも、なにかしらの花が咲いている。

こんなところに、ポツンと一本桜

ほかにもいろいろ咲いている。誇らしげなものや、ひそやかなもの。花も性格を持っている。


昨年の今頃は24歳になったマロンの世話に気をとられていた。眼もみえなくなり、体の自由もきかなくなっても、いざるように動いて懸命に生きていたマロン。空っぽになった家の中で、ときおりマロンのいざっている姿を思いだしている。

そういえばマロンも、チビがまる子に甘えるように、よくプリンに甘えていたっけ。人間もそうかもしれないが、オスはメスに叶わないのかもしれない。なにしろ染色体が、オスのほうが一つたりないのだという。生き物としては、オスのほうが不完全なのだそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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