変化

 

今日は、幽玄の富士といったところ。坂道の途中には、落ち葉がいっぱいだった。このごろ、チビとまる子は、離れていることが多い。これまでのチビは、まる子にいつもくっついていたが、最近は距離をとっている。具合の悪いまる子が、ひっそりと茂みに隠れていたころからだ。チビの自立のきざしかもしれない。

初めてチビとまる子をみたときから二年あまり。頼りないチビも、外見だけは、立派なオス猫になった。なにしろ、木登りがうまい。相当に高いところまで登って行く。

 

それでもまだまだ臆病で、ちょっとした物音にもびくびくする。けれども、初めのころは近づくとすぐ逃げていたのが、このごろは撫でることもでき、ブラッシングもしてやれるまでになった。

変化といえば、眼つきのこわいおじさんたちを引き連れて歩く女王様も、少し変わってきたようだ。まる子のおしっこの調子が悪いので、薬を飲ませていたが、やたらとお尻を気にして舐めてばかりいた。ひっきりなしに舐めるので、血が出ていた。おかしいと思っていると、なにか薬の匂いがした。これはと思って、女王様がくるころを見計らい、駐車場で待っていると、いつものように、おじさんたちに囲まれて、彼女はやってきた。

訊ねてみると、やはり薬を塗っているのだという。舐めすぎてしまうから塗り薬はやめてほしいというと、彼女は、こんなところの猫なんだから、それぞれ好きにすればいいではないかという。それで、まる子がおしっこのあと、痛がって走りまわり、すぐに草むらに隠れてしまうことを説明したら、彼女はそんなことまで見てないから知らないという。それでも二日連続で話をし、お願いしたら、どうやらわかってくれたのか、よけいなことはしなくなり、驚いたことに、山盛りに置いてあった餌も近頃はない。彼らが置いて行く餌を片付けなくてもよくなって、とても助かっている。女王様にも、変化か? 以前、彼女に、餌のことを書いたビラを何度も剥がされたときには腹が立ったが、結局、市役所の大きな看板やビラよりも、じかに根気よく話すことで相手に伝わるのだということを知った。

自分の無力を嘆いているより、とにかく動いてみることだ。そうすれば、相手もまた動くこともある。話すこともないだろうと思っていた彼女のことを、少し好きになった。まる子たちは、私にいろんなことを教えてくれる。諦めていたことが、これでまた一つ、変化した。

 

 

 

 

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