白はどんな色よりも清々しくて、自然の中にあっても目立つ色。富士も、やっぱり雪があっての富士。でも、紅一点という言葉はあるのに、なぜ白一点という言葉は生まれなかったのか、不思議な気がする。
猫も、白色はとても目立って、野良としては生きにくいことだろう。でも姫はとてもタフ。たまにほかの猫が自分の場所に入ってくると、容赦しない。メスなのに、とても気が強くてなかなかの姉御なのだ。一見清楚な感じを受けるが、要領もよく、したたか。誰かに似ている。
今日の気温は21度まであがり、夕方になっても寒くならなかった。出会う人たちもみんなコートを腰に巻き、暑いねえといっていた。暖かくなると、トレーニングのために、学校の部活やどこかの集団がランニングしながら丘の上まで走って登ってくる。声をかけあい、足音を響かせて。いつもは静かな丘に、野太い声や足音が響く。
ちょうどまる子とチビに餌をやろうとしていた時で、臆病なチビはどこかへ隠れてしまい、なかなか出てこない。しかたなくまる子にだけやって、しばらく待ってみた。
すると雲たちも、まるで追いかけっこをしているみたいに、強い風に飛ばされてぐんぐん飛んで行く。
しばらくすると、今度は小さな雲が竜巻のように巻いて空に上がって行った。まるで昇っていく龍だ。
空ばかりみていると、いつのまにかまる子がそっとそばにきていた。
チビがさっぱり出てこないので、林の中に入って行くとようやく出てきた。まる子、さっき食べたばかりなのに、あたしのは?って顔をする。
今年もまた、タケノコの季節が近づいてきた。掘りたてのタケノコのおいしさは格別だ。タケノコの話で、面白い話をしてくれた人がいた。チビまる子に餌をやっていると立ち止まって話してくれた。
自分の山にタケノコを掘りに行ったら先客がいて、いきなり、「おれんちの山に入ってくんな、このタケノコ泥棒!」と怒鳴られたそうだ。それでその人は、「なにいってるだ、ここいら一帯ははおれんちの山だ」と言い返すと、相手は、「タケノコ泥棒はみんなそう言うだよ」と、返してきたという。泥棒のほうがあまりに堂々としていたので、持ち主であるはずのおじさんは、すごすごと帰ってきたのだそうだ。
それと似たようなできごとが、このごろ多い気がする。黒のほうが白をねじふせている。タケノコおじさん、今年は負けないで!