丸々まる子

 

母猫まる子はとても太ってしまった。避妊手術をしてから、どうもホルモンのバランスが崩れてしまったらしい。そのうえ、通りすぎる人たちが気まぐれに餌をやるものだから、加速度的に太ってしまった。

初めは、美猫だの、なんとかいうアイドル歌手に似ているだのと、ほめそやしていた人たちも、最近はメタボ猫とかデブ猫とか言って、笑っている。アイドルはすっかり地に落ちてしまったのだ。

でも、まる子はそんなことは気にしない。餌をくれそうな人がいれば、すり寄って愛想をふりまく。そして、食べ終わった後はもうしらんぷり。そそくさと体をなめはじめ、自分ファーストモードに入る。

 

そういうときのまる子の頭の中には、毎日、暑い日も寒い日にもきつい坂をのぼって餌をやりに行く私のことはない。とにかく、今、目の前にあるものしか信じないのだ。飼い主に捨てられて、草むらで子を産み、人間の気まぐれに振り回されても、やっぱり丘の上の主の座を守っている。

でも、ときおり、まる子はふいに悲しげな顔をして、坂をおりる私のあとを追ってくることがある。自分にもたしかにあったはずの家に帰りたいのだろうか。

 

 

 

 

 

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