傷んだ羽

ほら、空に、鯨がいるよ!

そばに寝転ぶまる子に思わずつぶやいて、空を指さしてしまった。澄みきった夏の空には、のんびりと浮かぶ大きな鯨。

遠くに見えるのは、傘雲をかぶった富士山。鯨は、深くて大きな空をのんびりと泳いでいる。

でも猫は言葉が話せない。それでも、そばにいるだけで、話していることが通じる気がするときもあるんですよ。

猫だけでなく、チョウチョや虫たちにも、じっとみつめていると、話しかけたくなってしまうときがありまして。おう、おう、おまえたちもこの暑さの中、がんばってるんだねえ、と。

こっちをじっとみつめているハチさん、その長い針で狙ってるのかい?

水滴を吸っている蝶。おいしそうだね。

おまえは、なんてきれいな模様を持って生まれてきたんだろうか。自分の美しさに気づいてる?

どこにでもいるありふれた蝶だって、よくみれば美しいのです。

これからがクライマックス!

毎日、セミが盛んに鳴いている。子孫を残すために精一杯の声をあげてアピールしている。道を歩いていると、木から落ちてしまったセミが二匹、つながったまま、羽も傷ついて、それでもまだ離れず、転がりながらに必死に交尾していた。

なんという執念。絶対に滅びてはいけないという本能。思わず、すごい、と声をあげていた。落ちたところは道。人に踏まれそうになっているというのに、最後の最後まであきらめずに。傷んだ羽を休めるまもなく・・・。

我が家の荒れた庭に、ようこそおいでくださいました。今年は雨続きで、植えた花がみんなだめになってしまったのに。

こんなんですが、ぼくにとっては、立派な家なんです。ワツセ、ワッセ!

これは、ミノムシ。汗をふきふき、丘への坂道を歩いていると、なにやら枯れて丸まった葉っぱがゴソゴソ動いているので、よくみると、葉っぱの下から首を出した虫が、自分の家を重そうに背負いながら動いていた。

お引越し?  それとも、木から落ちてしまったの? 虫はちょっと焦っているようでした。鳥にでもみつかったら大変。それに、男の子がきっとこれをみつけたら、葉っぱをはがしてしまい、丸裸にしたあげく、きっと潰してしまうでしょう。敵はそこらじゅうにいて、眼をひからせているんですよねえ。

ちょっと気持ちが悪い虫。でも、なんだか、スカートをはいているみたいな恰好がおもしろいんです。どんなものにも、いいところやおもしろいところがあるってことです。

じっとみていると、虫たちの話す声がしてくるような気がする夏の日。私には羽がないけれど、でも背中の羽が傷んでしまったような気がする日には、空をみあげたり、地面や草の葉やそこかしこにいる虫たちを眺めたりしていると、背中がじんわりとしてきて、つぶれてしまった羽もよみがえってくる気がするんですよね。

形をした雲は、いつのまにか消えてしまい、日暮れの空には、もう秋の気配がする雲が出ていました。

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