お馬の散歩

 

車で走っていたら馬が二頭、小さいのと大きいのがお散歩中。この道では、たまに、馬に乗っている人に出会う。革ジャンに乗馬靴を履き、ビシッと決めたシブい男性。でも、今日のは、人も馬も素朴な感じ。

大きいほうのお馬さん、近づいてみると、とてもやさしい顔をしていた。

馬といえば、私にもなつかしい思い出がある。私の実家は、田んぼや畑が広がっているところにあり、子供のころは、犬や猫に鶏、馬までいた。犬は秋田犬で、縁側の端でよく寝ていた。馬は、庭の柿の木のそばにつながれて尾を振り、鶏は庭を駆け回っていた。

あるとき、なにをしたのかは覚えていないが、親にひどく叱られて家に隣接する厩に入れられ、馬と一緒に数時間過ごしたことがある。親はこらしめるために入れたのだろうが、私は馬が好きだったから、怖くもなんともなかった。

父はときどき、私を馬に乗せて川まで引いて行き、馬を洗った。馬に乗ると視界がいきなり広がって、子供心に得意な気持になったものだ。

そんな子供のころのことを、馬をみていて思いだし、そのまま奥へと車で向かうと、細い山道に対向車もなくなって、ひっそりと流れる滝に出会った。

うとうげの滝という。落差が70メートルもある。別名、お君の滝ともいわれているのだそうだ。お君という若い女性の悲しい伝説にもとづいているらしい。たしかに、人目を避けるようにして流れる、細く長い滝には、若い女の伝説が似合う。ほとんど訪れる人もいない場所だから、なおさら物語が真に迫ってくる。

鬱蒼とした杉林の中、暗く細い道をぬけると、広々とした視界が広がる。かなり高いところまで登ってきたのがわかる。

秋晴れの空には、くっきりとした飛行機雲。

帰り道、ふっと、実家の厩の二階にいた猫たちのことを思いだした。厩の二階には祖母が嫁入りのときに持ってきた古い長持ちが置いてあったが、そこで子猫を産んだ母猫が子猫をくわえては梯子を上り下りしていた。

 

 

 

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