寄り添う

 

ヒメ、復活! 耳の傷も治ったようで、また白くきれいになり、元気になった。誰もこない雨の夕方、餌をねだってきたので、やると、きれいにたいらげて斜面を登って行く。「バイバイ、また明日ね」と声をかけると律儀に振り返り、うん、じゃあね、という顔をしてまた登って行った。少し前、汚れて弱りきっていた姿が嘘のように。

倒れた桜の木は解体されて運ばれたらしく、今日はもう根っこの部分しかなかった。水辺に浮かぶ桜の花びらにカモが近寄ってきて、くちばしで押して遊びだす。きれいで、ほほえましい光景にしばらくみとれていた。

まるで作り物のように美しい文様のカモ。水にぬれてさらに鮮やかだ。このカモかどうかはわからないが、いつも寄り添うカップルをみかける。カモはカップルになると、一生、添い遂げるのだという。

ときおり、いつもとは反対向きに池を回る。同じところでも見えるものが少し違ってみえるからだ。ヒジキとアズキがいるあたりにそうっと近づいていくと、ヒジキがアズキを守るようにして寄り添っていた。アズキが、大きな体のヒジキのそばで安心したように眠っている。

一時期、アズキがヒジキのそばを離れて別の場所に移動したときは、ヒジキがとても寂しげにみえた。痛々しいほどだった。アズキが戻ってきた今は、前にもまして、二匹は寄り添っていることが多い。小屋が粗末であっても、風があたっているときでも、二匹がたがいに寄り添っているのをみると温かな気持になる。

山形にいたとき、まだ家を建てたばかりのときだったが、キジの母子の別れに出会ったことがあった。分譲地だったそこは、昔は原野だったそうだ。きっとそこはキジのすみかだったのだろう。分断されたすみかを離れることができなかったのか、キジの親子は我が家の庭を横切って裏の林へ行っていた。

子キジが飛べるようになってまもなく、まだ飛ぶのに慣れていない子キジが、家の前の電線にひっかかり、車庫のそばに落ちてしまった。母キジはなんとか飛ばせようとするが、子キジはまもなく動かなくなった。それでも母親は半日近くもそばを離れようとはせず、ずっと見守っていた。キジの親子のすみかを奪ったようでとても心苦しかったが、しばらくして、美しい姿の雄キジと一緒に林のなかにいるのをみて、また新しい命が生まれるだろうと思い、安心したものだ。

チビまる子親子も、とても仲がいい。この二匹に関わるようになって、もう二年半になるが、争っているのを見たことがない。

今日の富士山 桜はすっかり散った。

 

 

 

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