迫力

駅前のイルミネーションが飾られる季節になった。今日はその点灯式。ゲストに歌手の秋川雅史がきて歌うというので、あの迫力のある生歌を聞きに行った。チビまる子のところへ行った帰りで、すでに、人込みはピーク。その人込みの端のほうにたどりついて、耳をそばたてる。

あいにく撮影禁止ということで、写真は撮れなかったが、その歌声は聴くことができた。6曲くらい歌ったうちで一番惹かれたのは「祭り」。北島三郎の歌だ。えっ、と思ったが、あの歌を彼が歌うと、なんというか、祭りは日本の祭りというより、オペラ風の祭りになって、その迫力ときたらすごかった。もちろん、「千の風になって」という、大ヒット曲も歌った。おしまいは、「翼をください」で、彼の声で聴くと、本当に翼がほしくなって、大空を飛びたくなるような気持になってくる。涙ぐむ人もいたほど。

ステージの上で、彼は言った。ところどころ聞きとれなかったところもあったが、「年を取れば取るほどに、10年前のことを思うより、10年先のことを思い、なにかに挑戦しつづけよう、そのほうがずっと楽しいよ」というふうな意味だったと思う。

なるほど、昔のことを懐かしんだり後悔したりするよりも、先の楽しみを探そうというわけか。と、自分勝手に解釈し、駅前の賑わいから脱出してきた。

それほど大ごとではないにしても、全身麻酔の手術を受けると、ちょっと人生観が変わる気がする。なにしろ、一瞬で意識がなくなってしまうのだから。木曜日の初検診ではさいわい良性という結果が出て、一安心したけれど。鈴木亮平っぽい医師は、にこにこして、ほら、「悪性反応はありません」と書いてあるでしょ、とパソコンの画面を指さした。なんと、優しい医師だろう。

それでも、術後はやっぱり疲れやすくて、体調はまだまだ6割程度というところ。家の仕事もなかなかはかどらず、もどかしい気持でぼうっと庭をながめていると、なんと、twinsの残ったほうの子が、庭にいた。あわててカメラを向けると、さっと動きだして、庭の外へ。そっか、カメラ、こわくなっちゃったのか、二匹のときはあんなに平気だったのにな。いいんだよ、元気でいてくれるだけで。

ずいぶん大きくなったね。天国に行っちゃった相棒のぶんまで大きくなってね。と、思わず独りごと。二匹して無邪気に遊んでいた姿を、どうしても思いだしちゃうよ。

街にイルミネーションが飾られるようになると、富士山がよくみえるようになる。ひさしぶりに笠がかかった富士をみた。

そして、帰るころの空には、宵の明星が小さく輝いていた。

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