秋の趣

いよいよ栗の季節。この栗は、一閑張りの器に乗っている展示品。こんなに立派な栗ではないが、秋になると、田舎の兄から収穫した栗が届く。暮れごろになると、干し柿も届く。ずっと母が続けていたことを、兄が引き継いだことだ。あたりまえのように思って受け取っていたが、いつしか、ありがたいことだと思うようになった。

一閑張りとは、籠や箱などに和紙を張り、柿渋や漆をほどこしたもの。地域によって少しずつ作り方が違うようだ。農家の人が農閑期に作っていたので、この名前になったという。

猫もあって、楽しい。下駄の足跡がおもしろい発想だ。

和の趣が美しい。どれも、興味をそそられる。

これら味わいのあるものたちが展示されているのは、昔、江戸末期に栄えたという柏屋という大旅籠の屋敷の蔵。なまこ壁という造りの蔵で、いろいろなものが定期的に展示されているところだ。

母屋には、びわもたてかけてあった。びわで奏でられたという、祇園精舎の鐘の声・・・という平家物語の一説が浮かんでくるようだった。

ちょっと触れてみたい気もしたが、さすがに気がひけて、眺めるだけにした。こんな立派なお座敷では、ごろ寝をすることもままならないだろうなあ。

庭には、小さな子供をかたどった石の水甕がある。我が家の小さな庭には、けさ、ときどきみかける猫が遊びにきていた。声をかけると、こちらを向いてじっとしていた。見返り美人のようなポーズで。

近所の人が餌をやっているようだが、警戒心が強い。我が家の庭は、私たちが住む前は長いこと空き家で、家なき猫たちのたまり場になっていたそうだから、たぶんこの猫も、庭の持ち主が現れて迷惑していることだろう。道理でいろんな猫が出入りしているわけだ。草だらけの庭も、あんがいと猫たちにはいいのかもしれない。

ここのところまる子の元気がない。持病のお尻の調子が悪くなったようだ。病院に行き、相談したら、手術の時期は逸してしまったようで、塗り薬と飲み薬を処方してもらった。はたして飲んでくれるかなあ・・・。

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