背景には富士
丘の上では、ツバメが盛んに飛行練習をしている。涼しくなると、暖かいところをめざして数千キロも飛んでいくというツバメたち。ヒナたちも巣立ちをして、いよいよその準備をしているのだろう。
平均時速は47キロだという。飛んでいる虫などを食べて、水を飲むのも水面を飛びながら飲むのだそうだ。なんと、餌を獲るときや敵から逃げるときは、時速が200キロにもなるらしい。
平均寿命は1年半。普通に、なにもなければ、15年から16年と長い。大半は、天敵であるカラスや猫、ヒナのときには蛇などにやられてしまう。そういえばチビがジャンプしてツバメを狙うこともあり、すれすれでツバメが助かるということもある。
眺めていると、いきなり、突っ込むように急降下したり、かと思うと、ツバメ返しで上昇したり、とても動きが速くて、カメラにはおさまりにくい。数千キロもの旅をこんなに小さな体で、と思いながら眺めていると、感慨が湧いてくる。
ツバメたちの後ろにみえた今日の富士。おもしろい雲がかかっていた。
ツバメたちが群舞するように盛んに飛び回っているなか、まる子はヨガのポーズで、体のお手入れに励んでいた。太りすぎてバランスがとれにくいのか、おじさんのバッグに足をかけて体を支えている。
朝から雨が降ったりやんだりで、まる子は濡れたままだった。背中は拭いてやれるが、お尻は無理だ。なので、ツバメの飛行練習のさなか、まる子は毛繕いに励む。一方のチビは、少しも濡れていない。さては、いい隠れ家でもみつけたのか。
チビは2日ばかり出てこなかった。近くの寺で花火大会があったり、ひどい雷雨があったりで、ビビリのチビにはさんざんな日が続いたからだろう。くたびれたせいか、きょうはツバメが低空飛行しても、あまり興味を示さない。かわりに、というか、おとなしいセミや小さな虫を狙っていた。
セミもこのごろは元気がない。木にとまっていたセミが力尽きてぽとりと落ちるのをときどきみるようになった。
何年も地中にいて、ようやく外に出て精いっぱい鳴き、子孫を作り、数日後には木から落ちる。その様子をみていると、けなげだ。飛びの練習に励むツバメも、力尽きて落ちるセミも、ツバメやセミを狙う猫も、それぞれにけなげだ。