半分の月

少し涼しくなってきたので、庭の草を取っていたら、妙なものをみつけてしまった。伸びた草を引き抜いていたら、ぴょんとなにかが飛んで、よくみるとバッタではないか。うん? バッタにしては二段重ね。お母さんが子供をおぶっているのだと思った。

だが、調べてみると、そうではなかった。オスがメスの背中に乗って、ほかのオスを牽制しているのだという。通称、オンブバッタというのだそうだ。なあんだ、そんなことか。それにしても、じっとみていると、大きい方が脚を動かし、子供をあやしているようにもみえた。

草取りに手間取って、でかけるのが遅くなった。チビまる子はおなかをすかせているだろうな。そう思いながら公園の坂道を登って行くと、斜面に、まだ少し早めの彼岸花。緑の斜面に、赤の点在。まだ小さく、みんなちんまりと並んでいる。

午前中はとても晴れていたのに、坂の途中で雨がふりだした。急いで上に行くと、やっぱりチビまる子は腹を空かせていて走ってくる。今日は合羽を持ってくるのを忘れてしまい、傘が一本しかないから、食べるあいだはチビまる子にさしてやり、私は木の下に入った。木から落ちるしずくが傘に落ちると、猫たちは上を向く。その姿が愛らしい。


そばには、つりがね草というのだろうか、白い花が咲いていた。朝、みょうな人からの電話でかなり気分がめいっていたが、眼と胸にしみるような白さをみていると、波立っていた気持も静まってくる。花や木って、そこにただあるだけなのにいいんだよなあ。

晴れたり降ったりと、今日の天気はめまぐるしい。だから、雲もめまぐるしく変わる。食事を終えた猫たちと東屋の方へ行くと、空の雲がさかんに踊っていた。渦を巻いたり、横に走ったり、太陽を抱えたり、かと思うと今度は飛びすさって行ったりと、落ち着かない空だ。こんな日はいつもの顔なじみの人たちもこないから、チビまる子と一緒にのんびり空を眺めていた。

雨の日はまる子、あとをついてくることが多い。じっと、こっちの動静を伺っている。こういうことには、なかなか慣れることができない。

イノシシが出るからあたりに注意をしながら下に降りたころには、すっかり暗くなり、空には、ちょうど半分の月。このあいだよりも少しだけふくらんだ。へこんでいた気持も、少しふくらんだ。