みんなくっついていると、あったかいね!
きょうはとても寒く、池のそばの温度計は4度。冷たい風もふきぬけて、さらに寒く感じた。でも、ママの胸で二匹くっついているこの二匹のトイプードルをみて、なんだか、こちらまでふわっとあったかくなりました。たくさん着込んで、しかもママに抱っこされてるなんて、なんてしあわせなの?
外が寒いほど、明りのともるところは暖かくみえるもので、公園の前にあるスターバックスも眺めていると吸い込まれそう。そしてまた、公園のそばに、ちょっと変わった店もオープンした。
古い民家を改造し、11月にオープンした店には、入口の脇に現役の機織り機が置いてあり、機織り教室も開いているのだとか。
機織り機が置いてあるのは、店の正面。外からもみえる。
土間があり、ちょっと昔のぬくもりがあって、手作りのパンやジャムなどが置いてあり、奥はカフェになっている。まだコーヒーを飲んではいないが、今度飲んでみようと楽しみにしている。
コーヒーをよく飲むようになったのは、鎌倉に近い所に住んでいたころ、暇をみてはぶらぶらと歩くようになってからだ。気になる店があると立ち寄ってコーヒーを飲んだ。
鎌倉には、ちょっと入ると、あまり人が歩かない道がよくある。そんな道をたどっていくうちに、有名な作家の家の前に出たり、ひっそりとした古い寺にたどりついたりする。その帰り道、小町通りにあるコーヒー店に立ち寄るようになった。
いつも一人だったので席はカウンターの端っこ。それでママさんと喋るようになり、日曜や祭日だけ手伝うことになり、以来、客ではなく、コーヒーを運ぶほうになった。
ほかのスタッフは全員女子大生で、私ひとりがおばさん。場違いな感じもしたが、彼女たちと一緒にいると、こっちまで華やいだ。早番と遅番とに分かれていて、家庭のあった私は、たいてい早番。店を開ける前の掃除がおわると、店の裏庭から花を摘んできて、テーブルの一輪挿しに飾って回るのも楽しかった。
でもママさんはときどき、怖ろしいことを言う人だった。
コーヒーをおいしく淹れるコツはね、仇をいじめるように、その背中に熱い湯を垂らすように、ねちねちと、わずかずつお湯を注ぐことよ。
そんなママさんの息子さんは、店の奥でパンやケーキを焼いていて、焼きあがるときは香ばしい匂いが店の中にたちこめる。これって幸せの匂いだなあと思ったものだった。
あれからもうずいぶんと年月がたったが、毎朝コーヒーを淹れるときには、ママさんが言っていた、仇をいじめるように、という言葉がいまだに浮かぶ。たしかに、コーヒーの粉の上に湯を垂らすと、丸めた背中のように盛り上がる。
パンが焼きあがるときのあの匂いが好きで、今では自分の家でもパンやケーキを焼いている。でも焼いているのは、私ではなく夫のほう。私はもっぱら食事の担当だ。
夫婦が、なんだか険悪な空気になっているときでも、パンが焼きあがるときの、あったかくて香ばしい匂いが家の中に漂ってくると、つい食欲に負けて頬が緩んでくるし、いやなことがあっても、なんとかふんばれそうな気がしてくるのです。
まる子、日差しを浴びているときはうれしそうだ。