一緒に歩こ!

 

 空は嵐の前の静けさ

坂の途中にまる子がいた。

「あれっ、まる子、こんなとこにいたの?」「うん、お出迎え。今日は、いつもより早かったニャ?」「そうね、一緒に上まで行こ!」「うん、行くニャ」

坂の途中の茂みから出てきたまる子に、「一緒に行こ」と言ったら、いそいそと並んで歩きだした。ときどき後ろを振り向いては、あとからくる夫を気にしている様子。猫なのに、気を遣っちゃってるのかな。それとも、野良ネコの習性で、背後を気にしてるのかもしれない。あれほど激しく鳴いていたセミの声は、もう聞こえなくなった。丘の上に登ると、遠くの海に、白くて大きな船がみえた。あの船はどこの国からきて、どこへ行くのだろうか。まる子が太りすぎたため、市役所の許可をようやく得て、「無責任なえさのやりかたはやめてほしい」というビラを貼らせてもらったのだが、たった二日で剥がされてしまった。もう一枚あったので、また貼りなおしたら、今度は一日ともたなかった。当該者が剥がしたのだろうか。それとも猫が嫌いな人かもしれない。目立たないところに置いた水入れの皿も、何度も捨てられている。

大きな立て看板にも、起き餌やばら撒きは禁止と書いてある。イノシシやハクビシン、カラスがふえてしまうからとあるにもかかわらず、あいかわらず置き餌も続いている。でも、へこたれてなんかいられないと、なんだかみょうに気持が高ぶってくる。

今日の富士には、笠がかかっていた。こういう富士は縁起がいいのだそうだ。なんだか励まされているようで、ちょっっとうれしくなった。 餌をたべると、猫たちは思い思いに好きなところでくつろぐ。外で暮らす猫には、いい季節になった。

このごろいやなことばかりが続いていたが、えさを食べて、ほっとくつろぐ猫たちの様子を見ながら、赤く染まっていく空を背景にして瞑想をおえるころには、笑っていることにしようという気持になった。そうすれば、きっと、いいことがやってくるはずだもの。台風の前の空はみょうに静かで、富士を赤く染めていた。