あの日のクリスマス

術後一カ月検診の日、ああ、これですっきりできると思っていたら、来月も検診があると聞いてがっかり。再発することもあるということで、経過観察になってしまった。

それで、帰り道、気分を変えようと、ひさしぶりに静岡の街に寄ってみた。歩いていると、粋なディスプレイの店があるではないか。おっと、と立ち止まり、しばらく眺めているうちに、そういえば、ドイツに行ったとき、こんなふうにしゃれた飾りつけをした店があちこちにあったなあと、思いだした。

石畳みの路地にまぎれこんだとき、窓辺に花があり、観音開きの扉が日の光をいっぱいにとりこんでいた家々。屋根の色や壁の色まで統一されていて、きれいだった。

ずいぶん昔の話で、家に帰ってから、ひさしぶりにとりだしてみたアルバムの古びた写真とともに、すっかり忘れていた記憶もよみがえってきた。

季節は10月から11月にかけての頃。せっかくの旅を楽しめばいいのに、どの写真をみてもあまり笑っていない。もしも今の自分があのころの自分に会えたなら、もっと楽しくやんなよ、と教えてあげられるのに。

ドイツのビアホールでは、小さなバケツほどもある大きなジョッキが出され、驚いたが、ドイツの人たちは、にぎやかに歌を歌いながら飲み干していた。体格がいいのは猫も同じ。デカッ、と思って撮らせてもらった猫の写真が一枚だけ残っていた。家にプリンとマロンがいたころで、あちこちと視線を走らせながら歩いても、なかなか猫には出会えなかった。

白雪姫のお城のイメージだという、有名なノイシュバンシュタイン城(白鳥城)に向かう途中、列車の窓からみた風景は絵葉書そのもので、現実のものとは思えなかった。

この写真は、城からさらに高い所へと通じる橋を渡って撮った。

ドイツのことをあれこれと思いだしながら、素敵なディスプレイの店をあとにしてさらに歩いて行くと、クリスマスの飾りつけがあちこちに。平日なのに、かなりにぎわっていた。

ここ数年は、猫のいる古墳の丘に通う毎日で、ほとんど街に出ることもなくなっていたせいか、自分がどこを歩いているやらわからなくなってうろうろ。ドイツの街でも、片言の英語を喋りながら、こんなふうにうろうろしていたっけ。

クリスマスの季節になると、よぎる記憶がある。横浜にいたころのクリスマスイブ、小説の同人誌仲間との飲み会があって、駅の地下街に集まったときのことだった。仲のよかった同人と抜け出し、コーヒーを飲みながらの作品の話になったのまではよかったが、しだいに意見の違いがきわだってきて、険悪な空気になった。

気分を害した彼女が突然に席を立ち、店を出て行った。驚いて私も後を追った。人の波をよけながら、駅へと続く階段をかけあがると、さっきまでみえていた彼女の姿はなく、にぎやかに弾んでいる駅前のざわめきが、急に遠のいていった。

そんな記憶も今ではうすれてしまったが、好きなこととなると一途になりすぎる性格は、今でもあまり変わっていないようだ。

 

 

 

 

「あの日のクリスマス」への2件のフィードバック

  1. 久しぶりにブログを見て、手術していたことを知りビックリしました。早く心配しなくてもいいようになりますように。
    (このコメントがとどくかなぁ)

    1. コメント、ありがとう。今年はいろいろありまして、6月には夫が心臓のカテーテル手術があり、
      私が10月末に鼻の横にできたしこりを取る手術をし、ゴタゴタとしてました。
      私のは良性だったのですが、またできるかもしれないということで。がっかりしてます。
      来年はもう少しおちつきたいです。せいこちゃんはかわりないですか?

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