似たもの同士

 

姫とまだら猫のいるエリアを過ぎると大きな池がある。一周すると1.5㎞ぐらい。まわりには季節ごとにさまざまな花が咲いている。今はあじさいだ。奥まったところでは、このあいだまで蛍が舞っていた。

遊歩道の途中に博物館と文学館があり、そのあたりを縄張りにする黒白模様の猫がいる。なっちゃんと呼ばれている猫だ。

なっちゃんは遊歩道の真ん中で寝そべったり毛づくろいをしたり、のんびりモードで暮している。それが最近、なっちゃんとよく似た猫が近くにやってきた。遠目にはどちらか見分けがつかないが、近づいて行くと、しっぽの長さがちがう。なっちゃんのしっぽは短いが、新入りのほうはとても長い。しかも、ひどく傷ついている。


池のまわりで餌やりのボランティアをしている人の話によると、虐待の末に捨てられたようだという。あちこち居場所を転々としていたが、どうやら、なっちゃんのテリトリーに紛れ込むことができたらしい。しっぽの傷をみて、誰か親切な人が病院に連れて行ってくれたのだというが、こんな環境ではなかなか治らない。


だが、クロシロと呼ばれるようになったこの猫は、めげない! きのうも、芝生の上で、ほふく前進をしていた。目線の向こうには二羽のスズメと、カモの親子。

「カモ、早く逃げて!」「母ガモ、ほらっ、子供を連れて早く水に入りな!」

いつのまにか集まった人たちの中から、悲鳴に近い叫び声があがる。そんな騒ぎをよそに、親ガモは子ガモを促して、ゆるゆるとようやく池に入り、ギャラリーは、ひとまずほっとため息。

そのとき、私の後ろにいた年配の男性が言った。「こいつ、初めて見たときはぐったりしていて、これは死ぬなあと思ったけど、すごい生命力だな」。彼は、術後のリハビリを兼ねて、毎日池のまわりを歩いているのだという。クロシロ、がんばれ!

 

 

 

 

 

 

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