この子の名前は、ひじき。あずきという名前の猫と仲がいい。
今年の春ごろ、誰かに池に投げ込まれて危うく命を落とすところだったらしい。さいわい、助けてくれた人がいて、こうしてのんびりと落ち葉の上でうたたねしている。落ち葉は、ここの猫たちにとって、座布団やベッドになる。
こんな風体だが、とてもやさしくて、あずきという名の猫と寒い時には寄り添って、お互いぬくめあって丸くなっている。あずきがしばらくそばにいなかったときには、みるからにさびしそうだった。
これからの季節、野宿する猫たちにとっては辛い時期が続く。それでも猫たちは知恵を働かせ、それなりに元気だ。
この子は、よくこうして記念碑の前の石の上で寝ている。昼間の日光がよくあたる石は、夕方になっても、ぬくもりが残っているのだろう。猫にとっては、記念碑もなにも関係にゃいノラ。
オッドアイの姫は、人気者。ボランティアのほかにも、気にしてくれる人が多い。オッドアイの猫は、縁起がいいそうだ。右の眼は、吸い込まれそうな青。
ボランティアのほかに、ここの猫たちに餌やりを続けている人が数人いる。みるにみかねて、連れ帰って面倒をみた猫も一匹や二匹ではないという。
昔はここにいた猫の総数は100匹以上だったという。捨てられた猫やその子供たち。殺処分があたりまえだったそのころは、相当数の猫たちが処分されたのだそうだ。処分をまぬがれても、毒の餌を与える人や、池に投げ込む人もいて、命を落とした猫も少なくないのだという。猫に餌をやっていると、石を投げつけてくる人もいたのだそうだ。
市役所による避妊や去勢の手術が行われるようになり、地域猫という存在になってからはずいぶん減って、今は13匹くらいだとか。
池にいるサギ
ボランティアもその人たちも、餌代は自費だ。毎日となると、費用がかさむ。年もとってきて、いつまで続けられるかなあと言っている。それは私にとっても同じことだ。
途中で、猫を抱いて、犬を散歩させている人に出会った。後ろにいるのがワンコ。抱いている猫は、ノラを保護したのだという。なんだかチビに似ている。
よくこうして、散歩しているのだという。リードをつけているほうが猫で、ワンコがつけていないというのがおもしろい。よかったね、いい人に出会って。
チビ、ようやく、草刈りを終えた丘の上にまで出てくるようになった。それでもまだ、隠れる草むらがなくなったので、おっかなびっくり。
五時になると市内に流れる音楽がここまで聞こえてくる。そのころになると、まるで消えてしまったように、人の姿がなくなる。誰もいない丘の上で、二匹がなにかみつけたらしく無心に遊んでいる。