猫的

横浜から山形、山形から大阪へ、そして七年ほど前、今度は静岡へとやってきた私たち。夫婦と、そしてマロン。ずっと一緒だったプリンがいなくなってからは、いつもなにかが足りないなあと思う毎日だった。

それで、浜松動物園のアムールトラの誕生を知って、行ってみることにした。欠乏症の脳に刺激を与えるためだった。

そして、テンという名前の小さなトラに出会い、「これは、猫だ」って思った。しぐさも動きもなにもかも、猫なのだ。それで、たちまち虜になってしまい、毎週のように浜松まで通った。

3頭生まれた子トラのうち、一頭だけ生き残ったテン。母トラに育児放棄されて、最初は飼育員室の中でつきっきりで育てられ、そして檻の中へと移動し、運動場へと、飼育員さんは順に慣らしていった。少し大きくなって初めて外に出たテンは、ちょっとおどおどして、飼育員さんのそばにばかりいた。

飼育員室でいつも寝ていたタオルが、檻の中にもあった。そうすると安心するからだという。水遊びが好きで、よく水飲み場のまわりをびしよびしょにしていた。

隣りの檻には母トラがいたが、気づいているのかいないのか、双方とも落ち着かない様子だった。初めて外に出たテンは、はしゃぎながらも、すぐに飼育員さんのところへ戻ろうとする。

爪とぎもしている。

テンは、週を追うごとに、外に慣れてきた様子だった。しだいに動く範囲が広がり、テン、と呼ぶと、ちゃんとこっちを向いてくれた。

でも、まだまだ子供のテンは、ときどき飼育員さんにだっこをねだる。抱える飼育員さん、とても重そうだった。

興奮を抱えながら家に帰ると、我が家のトラ猫は、だいぶくたびれている顔。それはそうだ。いくつもの戦いや引越しを乗り越えてきたんだもんなあ。そりゃあ、くたびれるさね。

マロンは、テンと同じように、タオルにくるまれているのが好き。安心するようだ。腎臓が悪く、水分を補給するために自宅での皮下点滴は続けていて、薬を飲ませるときにはこんなふうに、好きなタオルにくるんで飲ませることにしていた。

プリンのときには治してやりたいと思うあまり、かえっていじりすぎ、辛い思いをさせたから、マロンにはそんな思いはなるべくさせないようにと、最低限のことだけを続けることにしていた。

 

 

 

 

 

 

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